旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□第2話・2
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福福 愛理はあいもかわらずパソコンとにらめっこ。
市場は閉まってるが、投資はデータが命とやらで、研究に余念がない様子。

信代は自宅から持参の紅茶をいれ、満優といっしょに飲んでいた。

仁は厨房で道具の手入れ、孝太はそんな仁を手伝っている。

心「ただいまぁ!」
元気よく帰宅する心。

出迎えてくれたのは仁だけではない、愛理も孝太も信代も、

そして満優も心を『お帰り』とあたたかく出迎えてくれる。

兄がひとり、時にはお客さんといっしょに出迎えてくれたいつもの風景はそこになく、

兄の周りにたくさんの友達がいる‥楽しそうな兄の笑顔‥そのことがたまらなく嬉しい心だった。

伝助「あのぉ‥僕も帰ってきたんでっけど」

吹き出す心。

福福の中が明るい笑い声で包まれる。それから‥夕飯の支度をする仁と心。

2人を手伝う満優に孝太に信代。

愛理は缶ビールを飲みながら新聞を読んでいた。

伝助はそんなみんなをジっと見詰め

伝助「ひさしぶりやな‥こんな感じ‥せやろ、総右衛門‥源左衛門…」

微笑む伝助‥目に光るものが浮かんでいた。

満優「あ、伝助、なにをしてるのです?もうすぐお食事ですよ、早くお座りなさい」

伝助「あ、いえ‥あのぅ‥満優様、ちょっと思い出した用事がありまんのでぇ‥あの‥
ちょっといってきますぅ」

満優「こんな時間にですか?‥明日にはできないのですか?」

伝助「すんません‥すぐに終わらせて帰りますから」

満優「しかたありませんね‥でも早く帰るのですよ‥」

そんな満優の声を聞き終えずに福福を出ていく伝助。

このとき、ある決意をしていたなど、仁・愛理・孝太・信代はもちろん、

満優さえも知りはしなかった。

そう、誰にも覚られぬように…。

ガシャーン!…けたたましい音を立てて割れる茶碗。

心の手から滑り落ちた茶碗は‥可愛いパンダの絵柄の茶碗。

伝助のために心が選んだ食器だった。

心「伝助ちゃん‥」

言い表せない不安が、何故か心の胸を締め付けた。

伝助は走る…決意を胸に‥。

亡き友の姿が浮かんでは消える‥総右衛門‥源左衛門。

伝助は走る…ただ、ひたすらに走る‥。

伝助「満優様‥すんません。仁、愛理、孝太、信代ちゃん‥あとはよろしゅうな…。

心ちゃん‥幸せになるんやで…理奈ちゃん‥えらそうにゆーたけど、ほんまは僕が
いちばん泣きっぱなしかもしれへんな‥かんにんな…」

伝助は走る…走る…。


都内・深夜の路地 時間もさることながら、飲み屋街とはうってかわってここは
ひっそりとした住宅街。

明日は日曜日と言うこともあり、いつもより遅くまで安酒を浴びたサラリーマン風の男性が、気持ちよさそうに千鳥足で家路についている。

『ん?』遠くに見える怪しい影。どんどんと近づいてくる

ガシャンガシャン!激しい物音をたてて鎧武者のシルエットがやってくる。

男性は恐怖を覚えた‥しかし、その時にはもう鎧武者は刀を抜いて迫っていた。

男性は『ぎゃあああ!』と悲鳴をあげ、たまらずうずくまる。

『しゃああああああ!』と唸り声のようなものが聞こえたと同時に、小さい影が鎧武者の刀を弾く。

影に斬りかかる鎧武者。ふたたび、『しゃああああああ!』と聞こえる。

その声が響いたかとおもうと、瞬時に静けさを取り戻す路地。

恐怖でうずくまっていた男性は、おそるおそる顔を上げる。

すると、すでに鎧武者も小さい影もあたりにはいなかった。


福福・早朝 午前4時‥結局、帰宅しなかった伝助を心配して仁と孝太は周囲を捜しに
出ている。

愛理と信代、満優は連絡を待つため、福福で待機しているが、
一様に皆、伝助を案じていた。

そこに、息を切らせて仁が帰ってくる。

満優「仁さん。どうでしたか」

愛理も信代も立ち上がる。

仁「いや‥ぜんぜん見あたらねぇ」

その言葉を聞き、気落ちする満優。

信代はそんな満優を気遣う。

愛理「だいたい、いっちょまえに夜遊びなんかするっ?ぬいぐるみのくせに‥」

口ではそう言うものの、とても心配している様子。

そこに、孝太が慌てて帰ってきた。

孝太「仁君!満優さん!」

仁「孝太!いたのか?!」

孝太「いいえ‥伝助君はまだ‥でも、気になることが」

満優「なんですか」

孝太「昨日の夜から今朝にかけて、あちらこちらで昔の‥鎧武者みたいな化け物に

襲われたと派出所に通報があったそうです。酔ったサラリーマンだったり、

カップルだったり、残業開けや夜勤明けの人たちも‥

全員被害もなく、足をちょっとひねったり、すりむいたりぐらいなんですが、

共通してその化け物と戦っているような小さくて唸り声を発する影を

見たって話しているそうです」

愛理「それって‥」

信代「まさか、伝助ちゃんが‥」

愛理「あの熊猫、化け物とひとりで戦ってるってこと?」

仁「じゃあ化け物って‥あいつらか!」

孝太「妖霊族・魔フォウズ‥」

満優「だとしたら‥ツクモ神を使ってきたのかも知れません」

仁「つくね炊き?」

信代「付喪神(つくもがみ)‥人の念や想いが込められた物が意思と力を得た‥物の精霊ですよ」

満優「早く捜しださなければ」

駆け出そうとする。

仁「あっ!ちょ、ちょい待ち!アレを使おうぜ」

仁の言いたいことを察する満優。

孝太や愛理、信代は不思議そうな感じ。

満優「みなさん、こちらに‥」

異空間へ移動しようとする満優、そこへ伝助を案じて眠れなかった心がやってきた。

心「お兄ちゃん!やっぱり伝助ちゃん帰ってこなかったの?」

仁「心、心配しなくていいからちゃんと寝てろって言ったろ」

信代「やっぱりって‥何かこころあたりがあるの、心ちゃん」

心「え‥うぅん」

信代「なんでもいいのよ、ちっちゃなことだってかまわないから、気になったことや

気付いたこと、思い出してくれないかな」

愛理「昨日、あの熊猫と遊んでたんでしょ、何かこう‥変わった様子とかなかった?」

表情が曇る心。理奈とは、たま太郎の事を秘密にすると約束していた。

仁「なにか知ってるのか?心、話してくれ」

満優「心ちゃん‥」

兄や満優の顔を見る心‥意を決したように、心は口を開いた。


川原 夜も明けてきたのか、徐々に空も白みだしていた。

そんな夜明けの静けさを崩すかのような激しい爆発。

吹き飛ばされるボロボロの伝助がいた。

伝助「はぁはぁ‥よーやっと出てきたみたいやな‥われぇ」

インガとカルマが鎧武者‥ツクモ神・凶厄丸を引きつれ、伝助の前に立ちふさがる。

インガ「おまえ!よくも邪魔ばかりしてくれたね!」

カルマ「死んでもらうぞ」

インガは鎖短剣の怒淋を、カルマはその長身と同等の剣、残哀を抜いた。
インガ「凶厄丸、殺っちまいな!」

満身創痍の伝助に斬りかかる凶厄丸。

伝助「しゃあああああ!」

闘志溢れる唸り声が辺りに反響した。


福福 心からたま太郎のこと、少し様子が違った伝助のことを聞いた仁たち。

愛理「それじゃ、とにかくその理奈って子のところにいって化け猫をとっつかまえましょ」

信代「でもそれじゃあ、なんの解決にもならない‥満優さんの話では、そのたま太郎は
付喪神じゃないみたいだし‥」

満優「おそらく‥悪しき力、怨・魂力(おん・エナジー)により

狂わされた物の魂‥本来の付喪神ではないツクモ神。

でも、その子はツクモ神を作りし怨・魂力の余波で生まれし存在だと‥

それでも放ってはおけませんね」

孝太「それじゃあ行きましょう、ここで話してても伝助くんが見つかるわけでもない、

ツクモ神が‥魔フォウズが現れているならなおさらに」

信代「そうですね‥愛理さんの言うとうり、理奈ちゃんとたま太郎に会えばまたなにか
わかるかも知れないし、孝太さんの言うことも正しいです」

愛理「決まったわね、それじゃいきましょう!」

心「お兄ちゃん、伝助ちゃんをきっと連れて帰ってね!それと‥理奈ちゃんや
たま太郎ちゃんの事…」

心配そうな心の頭にそっと手を置く仁。

仁「わかってる、お兄ちゃんに任せとけ」

優しく微笑む。

愛理「なにカッコつけてんのよっ、心ちゃん、私たちがついてるから心配しないでね」

愛理をはじめ、満優や孝太、信代は心に向かって微笑んだ。

信代「いきましょう!」

仁たちは異空間へと急いだ。
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