旧 霊皇戦隊セイレンジャー 1

□短編・お正月編
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回想


盛り上がる宴席、総右衛門は得意のアイリッシュダンスを披露している。

伝助と源左衛門は拍手喝采。意気揚々とステージに見立てたテーブルから降りて来る。

伝助「イヨっ日本一!総右衛門、足のキレがそんじょそこらの踊り子さんとぜんぜん
違うわな。まぁまぁまぁまぁ♪」

湯飲みを差し出して酒を注ぐ。

総右衛門「これはこれは、かたじけのぉございます若っ」

湯飲みを受け取り、美味しそうに飲む。

源左衛門は空になった柿ピーの袋などのゴミを集め捨てに行く。

そのあと、一休みとカウンター席に腰掛けた。そこへ総右衛門が酒と湯飲みを持ってくる。

総右衛門「源左衛門殿、まま、一献」

湯飲みを受け取ると総右衛門がついでくれる。

伝助「総右衛門っ総右衛門ちゃん」

酔っ払った伝助の声が呼んでいる。

源左衛門「相変わらずだな‥ふっ。俺はひとりでヤッてるから、伝助を頼む」

総右衛門「かしこかしこまりましたかしこでござる♪」

と伝助のところへ戻っていく総右衛門。

はしゃぐ2人を眺めながら優しい笑顔を見せると、静かに酒を楽しむ源左衛門。

伝助は総右衛門に自分の夢を語っていた。

伝助「‥っちゅうわけでやね‥ですからねっ、僕の夢ってやつですかっ。そ・れ・はぁ‥
そうえもやんとげんざえもやんといっしょにぃ、満優様と精霊のお城を再建するっちゅうことですわ(自慢)

もちろんっ、そん頃にはおかしゅうなってしまはれた勇護様も正気になりはってて、
満優様の隣にいてはんねん。

仲よぉしてくれはったりなんかしてたりしてたらえぇのになぁ‥なんてな♪」

ウットリとした目で夢を語る。

それをじっと聞いていた総右衛門は難しい顔しており、ゆっくりと口を開いた。

総右衛門「若、たいへんよろしい夢ではございますなれど‥ひとつだけ総右衛門めには
気にいらぬ点がございまする」

伝助「気にいらん?気にいらんってどーゆーこっちゃ?!」

ムッとした様子。

総右衛門「若っ、失礼を承知で申し上げまするぞっ。勇護様はもうすでに以前の‥

わたくしめらが存じ上げている勇護様ではございませぬっ!

その手はすでに血で汚れ、人間にも精霊にも刃を向ける不届き者、

逆賊にござりまするっ。いまさらどの顔下げて満優様のもとへ帰られましょうや!

よしんば、帰る‥帰らせてくれと申されたとしても

はい、さようでございますかとはわたくし、おめおめと申すことなどあいなりませぬっ!」

毅然とした態度、でも目が据わってる。

伝助「やかぁしい!おまえに言われんでもそないなことよぉわかっとるわっ!

こないになってもたら昔みたいにわろて暮らすんはムリやっちゅうことくらい、

よぉわかってる!

せやけどなぁ、やっぱり満優様には幸せになってほしいやないかいっ」

熱くなる伝助。

総右衛門「まことに満優様のお幸せをお考えならば、ここはキッパリと勇護めのことは

忘れた上で、よき縁(えにし)をお探しするのがまことの忠義ではございませぬかっ!?」

こちらも熱くなっている。

伝助「やかましぃ!知った風な口きくなっ!満優様の気持ちなんかなぁんも知らへん
くせにっ」

総右衛門「これは聞き捨てになりませぬっ、わたくしめとて満優様のご心中いかばかりと
案じ、ともに悩んでおりまするっ。

しかし、相手はすでに逆賊にございまするぞっ!
我々精霊に弓弾き、さらには人の世までにも仇なす妖霊ならば、断じて許されるものでは
ございませぬっ!

若はあもぉございまするっ」

伝助「なんやとぉ!コラっ総右衛門、もういっぺんぬかしてみぃ!」

総右衛門「ですからっ、本当の事を申しただけでございまするっ」

伝助「そっれっがっ、気にいらんのじゃ!

満優様のなぁ、満優様のお気持ちを考えたら‥ふぇぐ‥うぐっ‥うぇぇん」

総右衛門「若、またお泣きになられて。男(おのこ)たる者、面前で軽々しく涙を見せるは恥にございまするぞっ。

それに、泣いたところで解決には至りませぬ‥」

伝助「もうええっ!お前の顔なんか2度と見とぉないっ!出て行きさらせっ!!」


福福・店内 伝助のとなりにただ黙って座っている源左衛門。

背中を向けて横になっている伝助‥泣いてる様子の背中。

小刻みに震えている。源左衛門が重たい口を開いた。

源左衛門「伝‥おまえは間違っちゃいない。

と言って総右衛門が間違っているわけでもない‥

満優様の気持ちを考えたのなら伝の言う夢が実現したほうがどれほどよいか…

でもな、現実はそんなに甘くは無い‥総右衛門が言う事はもっともだ。

妖霊族へと堕ちた勇護をどんなに想ったところで満優様が辛くなるばかり。

それよりも他に良き相手が‥たとえば仁だったり孝太も‥そのほうが幸せなのかも知れん。

勇護とはいずれ刃を合わせねばならない。

その屍を乗り越えなければ人の世を守ることは出来ない‥哀しいことだがな…」

先ほどとは違って静まり返る福福店内…。

伝助がムクっと起き上がる。

伝助「源左衛門‥僕かてわかっとんねや。僕の言う事は夢のまた夢‥叶うことの無い夢で
甘ったるい考えやっちゅうことはな。

せやけどな‥うぐっ‥満優様のこと考えたら‥

ひゅぐ‥なんや悲しゅうて悲しゅうて‥ふぇ‥ぼ、僕…」

そっと泣いている伝助の肩を抱く優しい目をした源左衛門。

時計の針音が響いていた…。


公園 総右衛門が寂しげにとぼとぼと歩いている。
福福を飛び出したものの、ゆくあてなどある筈も無く、

正月で賑わう街を寂しくうろついていた。

公園の池の前に立つ。

水面に映る顔‥チョコンと小石を蹴飛ばす。波紋が広がっていった…。


総右衛門の過去


ゲームセンター‥様々な人が集まっている。

小学生や中学生に高校生、青年など。

デート途中らしきカップルがクレーンゲームの前に立ち止まる。

女「いやぁ~ん、これ可愛い!ねえねぇ、ふっくん!これ欲しいなぁ」

甘えた声でねだる。

デフォルメされた50cm大の犬の人形が、

7種類ぐらいのバリエーションでゲーム機の中に沢山入っていた。

おもしろいのは犬の人形に色々な髪型があること。

アフロだったりモヒカンだったりサラサラヘアーだったり。

その中のひとつ、ちょんまげ姿の人形をねだっているようだ。

男のほうはそんな彼女にデレデレで、いいところを見せようと百円玉を用意し

男「みぃ、おれマジ捕っからぁ」

と意気込んでいた。

動くゲームのクレーン。

何度目かの挑戦の末、みごとお目当てのちょんまげ姿の犬の人形をゲットした。

女「キャー!ふっくんすっごぉい!!ありがとぉ。

みぃの宝物にするね♪

ふっくんだと想って毎晩チューしちゃうからぁ」

と散々公衆の面前でイチャイチャしたあと、ぬいぐるみを大事そうに抱えてカップルは
食事へと向かった。

ちょんまげ頭の犬のぬいぐるみは、嬉しそうな表情をしているように見えた。

それから1ヶ月後…

ダンボール箱に洋服やCD、それにあの時の犬のめいぐるみが次々と放り込まれていく。

あれほどラブラブだったカップルは別れを迎えていた。

数々の思い出の品を憎々しげにダンボール箱へと詰めている。

昨日、アクセサリーやバッグなどは質屋に買い取ってもらった。

残るこの品々は、ちょうど開催される近所のフリーマーケットに友達が出店するので

ついでに売ってしまおうとの魂胆だ。

女「あのウザバカ男、つきあってなんかいられねぇっつーの」

ぶつくさ行ってる女の部屋の窓に、ちっちゃなパンダの影が映っているのを誰も知らなかった…。

フリーマーケット会場 マンションの屋外駐車場を借り切って催された町内会のフリマ。

友人からついでに売ってと強引にわたされた品々を見て困っている女性がいた。

出店の女性「10パーくれるって言ってもさぁ‥売れ残ったらめんどくさいな」

文句を言いながらわたされた物を並べていく。

犬のぬいぐるみはCDの横にチョコンと置かれた。

寂しそうな顔をしている。

『この列どれでも100円』の値札が前に置かれる‥あんなにはしゃいで喜んだ思い出の
値段はたったの100円‥。

謎の声「この子、いただきますわ」

美しい、フルートのような女性の声が聞こえたかと思うと、置いてあるざるの中に料金の
100円を入れ、犬のぬいぐるみを抱くと瞬く間に去ってしまった。

出店の女性「あ、ありがと‥?」

立ち去った‥いや、消えたと言ってもいいほどの女性は、純白の衣服を身に
着けていたくらいしか印象を残していかなかった。
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