旧 霊皇戦隊セイレンジャー 2

□第11話・3
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伝助「しつこい樹やっ! このままやったら、僕ら疲れてもぉて負けてまう」

ルナ「どうしたら‥」

総右衛門「燃やし尽くすしか手がございますまいぞ!」

淑「そうですわね、問題は火種ですけど‥」

ルナ「イグニスの熱光線なら」

伝助「それでなんとかせんと‥」

ねん「んももっ! んもんも、うんもぉぉぉ」

(あー寒いっ、こんなに寒いと動く気にならないのねんっ)などと叫んだかと思うと
何処から取り出したものやら、瓢箪を‥

総右衛門「ねん、それは?」

ごん「ああ、それは侠真様の瓢箪ぶひっ。

鋼破ローダーに乗って学校へ駆けつけるとき、ねんに預けていたぶひっ」

ねんはどうやら『1杯ひっかけてでないと、やってられねぇ』的な考えになったのだろう。

総右衛門「若っ」

伝助「そやなっ!」

ねんが持っている瓢箪を総右衛門は取り、伝助へ。

瓢箪を受け取ると、酒を口に含み 笹葉に吹きかける。

総右衛門「侠真様の飲まれる酒とあらば、ポーランド産のウォッカ以上に強い酒のはず‥」

伝助「ルナ!」

すぐに伝助の言わんとすることを理解したのか、

ルナ「イグニス!」

笹葉をかすめるように、赤い羽根から熱光線が発射される。

シュボッ!

伝助「笹葉魂撃守國景・あっちっちヴァージョンやぁぁぁ」

青白い炎に包まれた笹葉を振るい、ルナの操るイグニスとルーチェを従えて
伝助は魔樹へと突っ込んでいった。

斬撃とともに炎が立ち、魔樹の幹を破壊していく。

総右衛門「今でござるっ」

燃える傷口を、ボムボーン・バズーカモードで追撃!

淑のガードボーンも続き、ごん、ねんも伝助の後へ続く。

カルマ「総右衛門‥相変わらずの知恵ものよ。

すぐに応える伝助の器量は、他を率いるに申し分なし‥

ゆえに、源左衛門も背中を預けるのだろう」

頼もしいものたちが精霊の側についている‥カルマは安堵した表情を一瞬、見せた。

カルマ「魔恐様の御身、禍々しき獣の樹ごときに触れさせはせん!!」

力を込めた残哀を振るって、魔樹を次々と断っていく。

伝助「今はしゃーないな‥総右衛門!」

総右衛門「心得ましてござりまする!」

瓢箪を放り投げ、カルマへと‥受け取り、酒を含んで残哀に吹きかけた。

ルナ「イグニス!」

長剣をかすめるように熱光線を撃つと、残哀は発火する。

カルマ「うおぉぉぉ!」

炎をまとった残哀が魔樹を斬り倒していく。

魔恐「あに様の酒か‥うぅ!」

めまいを起こし、魔恐はたまらず ふらついてしまう。

戦いに出るたびに、ジャシンに怨・魂力を吸い取られているとは気が付かず‥

著しく体力を消耗している魔恐の身体は悲鳴をあげていた。

カルマ「魔恐様!」

魔恐の異変に気が付き、すぐに戻ろうとするカルマだが
その行く手を魔樹たちが阻む。

カルマ「どけえぇぇぇ」

鬼気迫る剣は獣の樹を粉砕するが、なおも迫る魔樹の大群。

カルマ「おのれっ」

魔恐に迫る、尖った根‥激しいめまいに、うずくまってしまった魔恐の背中へと近づいた。

命在「魔恐様っ」

悩螺の爪で根を叩き折る命在。

うずくまる魔恐の背後を守り、襲う魔樹を跳ね除けていった。

カルマ「命在、健在だったか」

命在「ハン、おふざけじゃあないよっ。

魔恐様を守らずして、くたばるような あたいじゃないさっ!」

魔恐「ぐぅぅ‥め、命在‥」

命在「魔恐様、魔恐様の容態が優れないのはジャシンのせい‥

アイツが、魔恐様の身体から力を吸い取っているんです」

魔樹たちと戦いながら、命在は魔恐に訴える。

魔恐「私の力を‥それほどの力があやつにあるのか」

立ち上がろうとするが、身体が言う事を聞かない‥

命在「うおぉぉぉ」

爆発する怨・魂力。

命在の体内で、薔薇水晶の棘の力が膨れ上がる。

魔恐「命在‥お前の力は最早、限界。

燃え尽きようとしているものを‥なぜにそうまでして戦う? お前の戦う意味はなんだ」

命在「あたしに力を与えてくれた魔恐様をお守りするため‥

それ以外に何があるっていうんです!!」

命在は枝を、根を、爪で引き裂きながら魔恐に告げる。

命在「ジャシンは魔恐様を苦しめる相手‥あたしの力を吸い取り、いつか必ず魔恐様にも
牙を剥く獅子身中の虫‥下衆な男を始末しなきゃ、死んでも死にきれないと思ったが‥

アイツがそばにいてくれるなら安心して、冥土へ行けますよ」

炎をまとう残哀を振るうカルマの姿が瞳に写る。

魔恐「なぜ‥なぜ、お前はそんなに死にたがる?

あれほど生きていたいと願ったお前が何故!?」

命在「頭の悪いあたしにゃあ、そんな小難しいことの答えなんか出やしませんよ。

なんで ですかねぇ‥その答えは、カルマに聞けばいいんじゃあないでしょうか‥

あたしはただ、魔恐様に‥!!」

急速に身体から力が抜け始める‥足の踏ん張りもきかず、
よろめいては倒れるのを堪えるので精一杯。

魔恐「命在!」

紊乱を振って、命在の背後に迫る魔樹の枝を叩き折った。

それは、魔恐としてなのか‥真忍であったのか。

足下もおぼつかない歩みで、命在のそばへと寄る魔恐。

命在「魔恐様、こっちにきちゃあいけませんよ!

魔恐様は生きるんだ‥あたしの分まで、生きてもらうんだぁぁぁ」

力を振り絞って、命在は立ち上がり
跳ねると、悩螺の鞭を振るって魔樹を打つ。

しかし、魔樹は枝をからめて命在の鞭を奪っていった。

命在「ちぃぃ!」

爪で幹を裂き、さらに根をえぐって息の根を止める。

が、次々と押し寄せる樹の大群に爪が折れてしまった。

命在「ちくしょぉぉぉ」

悔しさを滲ませながら叫ぶ命在‥魔恐は、命在を助けようと紊乱を振るい続ける。

総右衛門「むむむっ!」

淑「ああっ!」

ルナ「羽根よ、急いで!!」

が、羽根は樹の枝に阻まれる。

伝助「銀色猫ぉぉぉ、しっかりせんかぁぁぁ」

駆けつけようとするも、ことごとく魔樹に邪魔をされ

カルマ「魔恐様、命在!」

カルマもまた、救出へ向かいたいと思いはあるが、
命在を襲う枝と根の数は、避けきれないほどに‥。

『魔恐様‥ウサギ‥』命在は、静かに目を閉じる‥そのとき!

源左衛門「させるかぁぁぁ」

朱色に輝くウサギが、暗黒を破って飛び込んできた。


侠真「させるかぁぁぁ!」

時を同じくして、友である源左衛門が同じ言葉を叫んでいるとは知らず
侠真は凛雫を救うべく、無頼を突き出していた。

凛雫の首と足を縛る樹を貫く侠真! 凛雫の足の戒めが解ける。

槍をそのままに、続けて金華を左手で抜くと 手を縛る樹を叩き斬る。

手足が自由になった凛雫は、地を蹴って跳ね上がり

宙で久涙を構えると落下‥無頼に貫かれている魔樹を、
侠真の如く、脳天から裂いていった。

まだ動きを見せる樹に、とどめをさす侠真‥

凛雫は、首に巻かれた枝をむしるように取ると、放り投げた。

あたりはやっと静けさを取り戻す。

凛雫は苦しそうに、肩で息をしている‥

侠真「だいじょうぶか、凛雫?」

凛雫「はぁ、はぁ‥も、もうしわけありません、侠真様」

侠真「ったく、俺様に油断するなだなんだと偉そうに言いやがって
てめえが捕まってりゃあどうにもならねえだろうが。

ちったぁ気ぃつけやがれ」
凛雫「はい‥急に身体から力が抜けたようになってしまって」

侠真「力が?」

『クククク』

侠真「凛雫、無頼を取れ!!」

凛雫は突然の事に戸惑いながらも、言われるままに槍を取って侠真に投げ渡す。

無頼を受け取り、すぐに大きい範囲を薙ぐように槍を振るが‥

ジャシン「遅い遅い、遅いですよ おぼっちゃん」

長柄の大鎌を携えた、ジャシンが凛雫の背後に立っていた。

凛雫「なっ!? 侠真様っ」

咄嗟に走り出そうとする凛雫に

侠真「動くな! 動くんじゃあねえ‥」

凛雫「侠真‥様」

凛雫は侠真の声に反応して、すぐに足を止めていた。

そのおかげで、凛雫の首は刈られずにすんでいた。

凛雫の白い首筋に、薄く食い込む賢愚の刃。

ジャシン「ククク‥もう少しでお前の首が、その か細い胴から転がり落ちていたものを。

残念なことをしたものだ‥美しい首を我が物に出来たのだが」

力を少し入れただけで、凛雫の首筋に血が滲む。

ジャシン「おぼえているか? 凛雫‥以前、勇護を追い詰めた我らの目の前で
戦う振りをして、勇護へ剣を渡したお前に私は言ったはずだ。

『邪魔者はしょせん始末されるが さだめ』お前はすでに、死ぬ運命にあったのだ‥

私の刃でな、ククククク」

ゆっくり大鎌を引くジャシン‥その手を、侠真の左手が強く掴み

そのまま自身の額をジャシンの顔面へと打ちつけた。

賢愚は動かぬように掴まれたまま、後方へと吹き飛ばされんばかりの頭突きを
放たれたジャシンだったが、倒れることなく耐えしのぐ。

その間に、大鎌をくぐり抜けて凛雫は地を回転。

ジャシンの魔の手から逃げ延びた。

侠真「この‥死神野郎」

ジャシン「クク‥きさまの頭突きなど、舌を絡めることを乞う女程度の攻撃でしたよ」

額から筋を描いて、口元へと流れる血を舐め取り
ジャシンは不敵に微笑んで見せた。

血にまみれた唇が妖しく、
吐息は甘く、毒のように身体を痺れさせる。
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