Novel(short)
□愛しい海へ
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君だけが、俺を一番に愛してくれた。
愛しい海へ
初めて会った時、お互いが偽りの姿だった。
無力さゆえに本物でありながら偽者になった俺と君はとても似ていたね。
力を持ちながらいつも守りたいものを守れない俺と力がないから何も出来ないと泣いた君。
思えば初めから君だけは俺を見ていてくれた。
英雄としてでなく、ザラの生き残りでもない、唯のアスランとして。
いつもマネージャーの制止を振り切って笑顔で俺に駆け寄って抱きついてくる無邪気な君をとても可愛いと思っていた。
俺がキラに討たれた時、俺が目を覚ますまで傍にいて生きていて良かったと泣いてくれたことがとても嬉しかった。
悩んでいた時、悩みを全部吐き出させてくれてその後黙ったまま抱きしめてくれた君の体温はとても優しかった。
泣きそうな顔でいつか断罪される日を覚悟の瞳で待つ君の後姿はとても強く、儚くて守りたいと思った。
何故、あの時無理矢理にでも連れて行かなかったんだろう。
何故、あの時一人で君を迎えに行かなかったんだろう。
何故、死んだ君を手放してしまったのだろう。
あんなにも怯えていたのに
あんなにも助けて欲しいを訴えかけていたのに
あんなにも、君はプラントを愛していたのに
今更気づいたって遅かった。
あんなにも優しく、幼く、愛しい君はもういない。
たくさんのものをくれた君に何も返す事が出来ないまま君を死なせてしまった。
この手に残っているのは抱きしめてくれて君の温かい体温ではなく、死を纏った君の冷たさ。
眩しい笑顔は薄れ、最後に見た泣き顔が頭から離れない。
これは彼女が残した俺への罰で、それでいて赦しなのだ。
本当なら君の後をすぐに追いたいけど、優しくて残酷な君はそれを嫌がるだろう。
だから、待っていて欲しい。
君の愛したプラントを守るよ。
もう誰かを愛せはしないだろうけど、たくさんの大切な人達とこれからを生きていく。
いつか、また会えたときは、いつものように笑顔で「おかえりなさい」と言ってくれないだろうか。
ミーア、君を永遠に愛してる。