03/03の日記
19:36
狂愛少女
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少女はとにかく周囲から愛されていた。
容姿は美しいと言えば美しいが、この上なく美しい訳ではない。
何かしらの目立つ点がある訳でもない。
強いて言えば深い色合いの澄んだ目が特徴とも言えなくないが、それでも少女以上に美しく個性的な人間はいくらでもいるだろう。
だが、彼女は狂った愛情を向けられることに関しては誰よりも優れていた。
少女の人生は生まれた時から凄惨を極めていた。
まず両親が死んだ。
死因はお互いを殺しあった末の相打ちだった。
何が原因かと言うと実にくだらない。
まず少女が父親に笑い、母親に抱きついたのが原因だった。
お互いに嫉妬して娘を取り合った結果、彼らは死んだのだ。
そんな少女には年の離れた兄がいた。
彼女の兄は絶世と言われる美貌を持ち、全能と言って差し支えないほどの知と武を有していた。
そんな彼が唯一愛していたのは血の繋がった妹だった。
どれくらい愛しているかと言うと、妹が望むなら世界中の人間全てを虐殺してもいいと思えるくらいだった。
そんな彼だからこそ、両親が死んだ時は心底喜んだ。
何故ならこの世で最も濃い血の繋がりを有しているのは自分たちだけになったからだった。
彼は怒りと嫉妬で般若の様な顔になっている血塗れの両親の死体を前に、青ざめた顔で気絶した妹を抱きしめて至福の笑みを浮かべた。
やがて時が経つにつれて少女は恐れるようになった。
まず兄を恐れた。
兄は少女に優しかった。
否、少女にだけ優しかった。
少女が怖がる物や厭う物は全て兄によって壊された。
また、少女を害そうとした者は例外無く兄が始末した。
次に周囲を恐れた。
何故なら普通に過ごしただけで何時の間にか誰もが少女を愛した。
ただ笑っただけで
だた話しただけで
ただ見ただけで
誰もが兄のように狂った愛情を少女に向けた。
そして最後に自分自身を恐れた。
彼女にとって周囲が自分に向ける愛情は恐怖の対象でしかなかった。
愛されないより愛された方がいいと思うだろう。
しかし、周囲が彼女に向ける愛情は異常だった。
少なくとも少女はそれによって自分自身すら恐怖の対象になったのだ。
そして、少女は選んだ。
ひたすら人目を忍び、目立たない日陰の人生を
気配は消した
十人並みより美しい容姿も隠した
ひたすら無感情無口に徹した
何より人と関わらないようにした
そうして少女は自らの特殊な環境を変えようと努力した。
だが、それは一人の人間によって無駄に終わることになったのだった・・・・・・
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☆コメント☆
[リオ] 03-05 12:58 削除
続き希望です!
あるひとって誰だろう・・。
[マヤ] 05-21 03:08 削除
兄が怖いけど、続きが気になります。
[沙紀] 05-29 03:47 削除
続き希望します
すごくおもしろいです
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