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□京の君
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『あの、すみません』
「あ?」
仕事の合間の休憩中で静雄はある女性に話しかけられ静雄は多少驚きながら応対する
「池袋の自動喧嘩人形」と呼ばれる自分に話しかけてくる者はそうそういない、まして女性とくれば尚更で少し動揺もしていた
『バーテンさん。うちここの住所の場所に行きたいんやけど、どう行ったらええんやろか?』
「あ、え?」
関西弁
彼女はメモ用紙に書かれた住所を見せながら静雄に尋ねた。が、当の静雄は関西弁など耳に慣れない方言に戸惑い、え、だの、あぁ、だのと言葉となって口から出てこなかった。それに気付いた彼女は笑いながら謝った
『あはは!エラいすみません、言葉訛って分からんかったんですよね』
「いや、…」
事実そうだった静雄は何とも返事ができなかった
『ええと、どう言うたらええんかな……?
私ここの場所に行きたいから道順を教えてもらえませんか?
って言うんかな?どやろ、分かりはりました?』
「あ、ああ。それならこの角を…」
こんな出来事はいつものことなのだろうか、別に彼女は関東弁が話せない訳ではないらしい
道順を一通り聞いた彼女はうんうんと頷き、静雄ににこりと笑った
『だいたい分かりました。お手間掛けさせてすみませんでした』
「別にこれぐらい…」
屈託のない笑顔で喋る彼女を見るに静雄のことを全く知らないのだろう。道行く人々がじろじろと通りすがりに見ていく、あの平和島静雄に話しかけている彼女を
「…俺のこと全然知らないのか」
『?どういう意味で?』
「いや……良い忘れてくれ」
『?』
最近池袋に来たのかもしれない。彼女は不慣れな街に戸惑いながらも一人異色を放っているように見えた
『バーテンさん』
「?」
『おおきに!』
最後にそう告げ、雑踏の中へと流れこんでいった
「("おおきに"…って…)」
「トムさん」
「ん、なんだ?静雄」
「あの…"おおきに"ってどういう意味か知ってますか?」
仕事も終盤に差し掛かったところ彼女が最後に言った言葉の意味がどうしても分からなかった静雄は自分の上司である田中トムに聞くことにした
果たして彼女は何を言ったのか
「おおきに……確か京言葉だったべ?」
「京言葉…」
京言葉
彼女は京都から来たのか
だから関西弁で話しかけてきたのか
「ありがとう、っつう意味だったか…」
"おおきに"は
"ありがとう"の意味
「…!」
「(やべ…)」
嬉しい
日頃感謝などされることは少ない自分が
こんな自分が、少しでも役に立てたことが
「(今日は、いいことあった)」
「うーっし!次で最後だかんな、行くぞ静雄ー」
「うっす!」
「(…がんばろう)」
京の君
(照りはえるは彼女の笑顔)
(太陽の如し)
京都が好きすぐる件について
京都らぶ!
私は京都を愛してるっ!
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