Short Novel
□追憶の彼方
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気づいた時には
それはもう二度と手に掴めなかった
追憶の彼方
久しぶりだな。
話?
ああ、まぁ、そうかもな。
ある馬鹿な男の話をしてやるよ。
そいつには大事な大事な家族がいたんだ。
変態だけど家族想いの兄
変わり者だけど優しい弟
生意気で自由な弟
そんな歪な家族だったけど、とても大事な家族だった。
男のとって、唯一無二の居場所だったんだ。
でも男には家族以外にも大事な存在がいた。
ある少女に恋をしたんだ。
家族以外に特別なんか作る気がなかった男の例外の存在。
そんな存在に男は何時しか夢中になっていた。
だから気がつかなかったんだ。
自分にとって一番大切なのは何だったのかを
自分がその存在にどれだけ支えられていたかを
そして、その愚かさ故に一番愛しい物を失った。
失って始めて気がついた。
その男にとって一番大事だったのは
一番愛していたのは
家族の象徴とも言える兄だったんだ。
そのことに気がついたのはその存在が死んだ後だなんて、本当に馬鹿だろう?
いっその事気づかなければ良かったんだ。
でも気づいてしまったんだ。
もう・・・どうしようもないのにな。
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