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レインドロップ、サンライズ
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鉛色の空から銀の雨粒が落ちてくる。
そっとこぼした溜め息は雨音にはかき消されず、隣を歩く鈴音に届いたみたいで。
「どーしたのセナ、溜め息なんかついちゃって」

バシーン!と勢いよく背中を叩かれたせいで、さしていた傘から雨粒が零れて肩にかかる。
別に濡れるぶんには全然構わないんだけどね。

「いやその、こんな雨じゃ、もう少しでクリスマスボウルに行けるかもしれないのに、なかなか練習できないな〜って…」
「うーん、でもしょうがないんじゃない?トレーニングルームも整備中で使用不能なんでしょ」

それはそうなんだけど、と反論する前にもう一度今度は肩を軽く叩かれた。

「大丈夫だよ!私は何があっても最後に勝つのはセナだって信じてるから!!」

そんな太陽みたいな笑顔で言われたら、本当に勝つしかなくなっちゃうのに。

全然怖くない、むしろ勇気が湧いてくるような気がするのはなんでだろう。

「あ!なんか晴れてきたみたいだよ」
鈴音が傘を降ろして嬉しそうに跳ね回る。確かに雲の切れ目から青空が覗きはじめていた。

「やー!これで明日は練習できるし、お日様も見れそうだね」


そうだね、と返事をしながらも本物の太陽よりもさっきの笑顔のほうをもう一度見たくなっている自分に気付いた。

その想いを正直に言葉にしたら、彼女はどんな反応をするんだろう。

そんな度胸はまだまだ僕には無いのだけれど。




レインドロップ、サンライズ

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