ES21 Text
□アルカディアよ何処へ往く
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どいつもこいつもカスばっかりだ。
才能もねぇくせに狡いだけのムカつく悪魔とか。
スピードだけが取り柄のチビとか。
全然役に立たねぇチームの連中とか。
――今俺の隣を歩いてる、口うるせぇハゲとか。
阿含、と俺を呼ぶ声で沈んでいた意識が浮上する。
めんどくさそ―に隣を見れば、案の定雲水がこっちを睨んできてやがった。
「阿含!聞いているのか?!」
「あ゛―聞いてるって。週末の練習のことだろ」
本当は聞いてなかったけどな。適当に言ったら当たりだったらしく、雲水はそれ以上何も言ってこなかった。
にしても、なんでこの俺様が買い出しなんかに行かなきゃなんねーんだ。他にもいるだろ。一休とか一休とか一休とか。
考えてたら腹が立ってきたから、目の前に転がっていた空き缶を蹴り飛ばしてやった。
思ったよりも高く澄んだ音がして、へこんだ缶が暗くなりはじめた空へ舞い上がる。
いつもだったらこういう時に必ずゴミ箱に捨てろだの何だのとやかましいはずの雲水が何も言ってこないもんだから、気味が悪くなって隣を見た。