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さよなら神様
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その人が泣いているところを、私はみたことがない。

親友の兄貴でボクシング部の部長でもあったその人は、いつも笑っていた。
時に仲間が危機に陥ったり、傷つけられたりして怒ることはあっても、泣いているところなんてみたことがない。いつも仲間と一緒に笑っていた。

泣いているところなんて、みたことがなかった。



「花」

十年前よりも少し低くなったあの人の声が私の名を呼ぶ。

その声を聴きたくなくて耳を塞いだ。

目の前に倒れている真っ赤なモノを見たくなくて目を閉じた。

血の臭いが漂ってくる。


「花」

十年前よりも少し低くなったあの人の声が私の名を呼ぶ。

その声を聴きたくなくて耳を塞いだ。

目の前に倒れている真っ赤なモノを見たくなくて目を閉じた。

血の臭いが漂ってくる。


「花」

また、名を呼ばれる。

一度も泣いたことがないはずの人が、たった今人を殺したばかりのひとが、泣いているように見えた。



私の好きだった笑顔は、もうどこにもなかった。





さよなら神様

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