novel2(BL book)

□嘗て、愛した人へ
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「ほら、ちゃんと咥えろよ」

こんなの大した事じゃねェし。

「もっと尻上げろって!」

いつもの事だから慣れてるし。

「コイツの四肢、間接から斬って四つん這いのセックス人形にしてやるかァ」

うっわ趣味悪ィ、勘弁してくれよ。

「もっと気ィ入れてしゃぶれよ!殴られ足りねーか?!」

どうでもいいよ。
殴られんのも、犯されんのも。
コイツで何人目だっけ?
10人目ぐれーかァ?
早くイってどっか行けよ。

下卑た男達の笑い声を聞きながら、疲れた身体をまっ黄色な銀杏の落ち葉が敷き詰められた地面に押し付けられる。

早く終われ。

銀杏の黄色を見ながら、ぼんやりとそんな事を考えてた。







嘗て、愛した人へ






ダン、ダン、ダンと小気味良い音がしてオレを組み敷いていた男達の声がしなくなった。
そしてすぐさまドサリ、とオレの身体に男の体重が乗ってくる。
一瞬の事で何が起きたのか分からなくて、それでも必死に顔を上げてみると男達の胸や背中にはクナイ、とかいう忍具が刺さっていた。
目の前の一変した状況に困惑しているとすっ、と一つの手が差し出された。
オレは咄嗟にその手を掴み、腕、胸、首と目線を上げてゆく。
そのまま先に目をやると、そこには穏やかな雰囲気を持つ顔半分を隠した忍が立っていた。

「大丈夫か?」

そう問われてハッとした。
オレは忍から視線を外し、自嘲気味に笑いながら答える。

「大丈夫、なんてオレに聞く事じゃねーぜ。オレは不死身だから死なねェし、こんな事しょっちゅうだからよォ、慣れてんだよ。オレの身体は何されたって大丈夫なんだよ」

ゲハハハハと笑ってやったオレを見て忍は同じ言葉を繰り返す。

「大丈夫か?」

「・・・人の話聞けよ。だからオレは大丈夫・・ッ」

「お前の心は大丈夫か?」

ぴちゃり、と鼻の頭に雨粒が落ちてきた。

「・・・・ココロ?」

オレは問う。
だけど忍はその問いには答えずに、

「雨、降ってきちゃったな」

と言ってオレの手を引いて立ち上がらせ自分の上着を羽織らせてくれた。

「おいで」

なんて優しい声。
オレはボツボツと雨の玉が降ってくる中、忍に導かれるままに歩く。
忍は足が不自由らしく特徴のある歩き方をしていた。
顔の半分を包帯で隠しているのも気になる。

「(戦争の傷跡ってヤツか・・・?)」

歩きながら前を行く忍をずっと見ていた。
三本の縦線が入った額当てを首に結んでいるが、オレはその額当てが指示す忍里を知らない。

「オレの里はさ・・・」

忍が突然オレが考えてた事を話し出したので驚いたが、そういえば読心術とかいう術があったな、とすぐに思い出し忍の話に耳を傾けた。

「オレの居た忍里はさ、地図にも載らないとても小さな里だったんだ。任務依頼の殆どは忍五大国の様な大きな里へいってしまうから、経済的には裕福とはとても言えなかったけど、綺麗な川が流れていてね、とても良い所だった」

「だった・・・?」

「戦争で潰されたよ」

「へぇ・・・」

オレは間の抜けた返事をする。
生まれの知れないオレが、潰れたとはいえ人の故郷の話にどう答えていいか分からなかったからだ。
そんなオレを先程と変わらない穏やかな瞳の端にちらり、と入れてから忍は話を質問に変える。

「お前はさっき不死身と言ったね?それは本当なのか?」

「ああ、本当だぜ。オレは首を切り落とされようが、心臓を一突きされようが死なねぇ。・・・死ねねぇ、の方が正しいかァ?」

「そうか・・・それなら病もお前の身体は侵せないのか?」

「病?意識して試した事はねーけど、今まで病に掛かった事は一度も無いからなァ。多分病でもオレは死なねーんだろうな」





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