novel2(BL book)

□カミサマおねがい
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カミサマおねがい


にゃあん、にゃあん。

オレはめいっぱい可愛い声を出す。

ぐるぐるぐるぐる。

喉を鳴らしながら身体を捻って、ほら、可愛い仕草もオマケしてやるよ。

だから、さァ。
そのテーブルの真ん中にどっかりと乗ってやがるターキーを寄こせよ。
オレはカイヌシの足に身体を摺り寄せる。

にゃあああん。

「ほら邪魔よ、飛段。今日は忙しいんだから。ケーキも焼けてないし、お料理だってまだ全部出来てないの。飛段のチキンは後でちゃんとあげるから、子供達と遊んでてちょうだい」

オイオイオイ。
ショボい、ペット用のチキンなんかいらねーっての。
オレが欲しいのはテーブルの上のデカいターキーだ。
ガキの相手なんかしてらんねェ。
だって今日はクリスマス、なんだろ?
特別な日、なんだろ?
オレにとっても大切な日なんだよ。
前から決めてた大事な日なんだ。
何が大事って、それは・・・
なんつーか、その、言いづれーんだけど・・・
とりあえず、オレはこの家を出て行く。
そんでェ、もう二度と帰って来ない。
あー・・今まで世話になったな。
つっても、ガキには耳やら尻尾やら引っ張られるし毛は毟られるし、其の癖、大会だ何だって毛並みや爪の手入ればかりされてよォ、ろくな家じゃなかったけどよ。
オレはターキーをねだるのは止めて、実力行使に出る。
カイヌシに見つからない様に、物音を立てずテーブルに乗り、並んでいる食器を上手く避けて、足にリボンのついた肉の塊を銜えた。
結構デカくて重てーな。
けど、こんぐらいの獲物の方が特別な日って感じがしていいよな。
オレは獲物を手に入れた安心感からつい、足元にあった皿をテーブルから落としてしまった。
がっしゃーん、と豪快な音を立てて皿が割れる。
勿論、カイヌシが飛んでくる。

「こら!飛段、何してるの?!」

怒ったカイヌシに獲物を取り上げられそうになったので、しっかりと銜えたまま走って逃げる。
オレが最近見つけた秘密の出入口、トイレの小さく開いた小窓に足を掛けた時、待ちなさい、と追いかけてくるカイヌシの顔を見た。
悪ィな、待つ訳にはいかねーんだ。
オレ、明日さァ・・・
そこまで考えてアイツの顔を思い出す。
やっべェ!早く行かねーと!!
オレは口から獲物を離して大きな声で言ってやった。

じゃーな、クソヤロー共!
にゃああああん!

ちゃんと挨拶したからな。
オレはカイヌシが伸ばした手を寸での所でかわし、獲物を銜えて外へ出た。



暖かい家の中から一変してピリリと冷たい空気がヒゲを撫でる。
大事な獲物を落さない様に気をつけながら、壁を伝い、ゴミ捨て場をすり抜け、公園の遊具を潜って目的地である廃屋へたどり着く。
壊れた扉の隙間から家の中へ入ると、いつもの声が聞こえてきた。

「遅かったな、飛段」

「角都!!」

大好きな渋い鳴き声。
真っ黒でツヤのあるかっこいい毛並みに緑の瞳。
にんまり顔で獲物を口から離してうっかり言っちまった。






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