novel2(BL book)

□カミサマおねがい
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「悪ィ、カイヌシが・・・」

「カイヌシ?」

「あッ・・や、違う!違う!痒いんだよ、耳の裏!蚤のヌシがいてさァ、超デカいヤツ!あー、かいー!!」

そりゃねーな、と思いながらも後ろ足でカカカッと耳の裏を掻く。

「飛段、お前飼い猫か?」

「あー?違うっつーの!オレは生粋の野良猫だって前に言ったろ!喧嘩も、角都程強くないけどォ、かなりの修羅場くぐってんだって。今日の獲物なんか二丁目のボス猫のペインとかいうヤツから奪ってきたんだぜェ!」

角都にこれ以上何か言われない様に必死で嘘を並べる。

「フン、まあいい。それより飛段、本当にいいのか?」

「・・・角都ゥ。オレは野良だし家族もいねェし友達なんて呼べるヤツもいねェ。ナワバリだって大したもん持ってねーしな。オレはさ、角都と一緒にいられればそれでいいんだ。そんなのもう、散々話し合った事じゃねーか」

「そうだったな、すまない」

「いいって!謝んなよ、角都。それよりさ、今日の獲物は超すげーんだぜ!オレ達の・・・クリスマスをしようと思ってさ」

オレはカイヌシから奪ってきたターキーを角都の前足に触れるように置いた。

「すげーだろ!ターキ・・・ッ」

「ああ、チキンのいい匂いがするな」

「・・・・・」

「どうした、飛段?」

「・・・え?あ、何でもねェ。そうなんだ!超スーパーすげェチキンを持ってきたんだぜェ!ゲハハハァ!」

・・・・ちょっとビビった。
角都の目があんまり見えてないのは分かってたけど、鼻もこんなに利かなくなってたなんて。
でもオレは角都に何も聞かない。
聞いた所で何にも言わねーし。
目があまり見えてない事を知った時と同じ、知らんふりして角都に話を合わせるだけだ。
胸がちくちくするけど、それも今夜で終わり。
オレは角都が大好きだから、ずっと角都の傍にいたいから、絶対に離れたくないから。
これ以上老いて動かなくなっていく姿を晒すのは嫌だと言った角都と何度も二匹で話し合って決めたんだ。


オレ達は明日、二匹で一緒に『ホケンジョ』の車に乗る。


そんで、後はずっと大好きな角都と一緒。
一緒の檻に入れられて、一緒に毒のガスを吸って、一緒に死ぬんだ。
前に家のガキが読んでた絵本で見た事がある。
死んだらカミサマがやってきて痛いヤツの痛いを治して、苦しいヤツの苦しいを治して、辛いヤツの辛いを治して、笑って空の上へ連れてってくれるんだってさ。
だからきっと、死んだら角都の目も鼻もカミサマが治してくれる。
誰にも老いぼれなんて言わせねー!
そんでオレ達は笑って空へ走って行くんだ。
なァ、楽しみだなァ・・・。

二匹で肉を食ってヒゲの手入れをしたら欠伸が出たので、角都にくっついて身体を丸める。
角都がオレの顔をざらざらの舌で舐めてくれるのが超気持ちイイ。
・・・・・死ぬってどんなんだろーな。
分かんねーけど、でも角都と一緒だからへーき。
きっと笑って死ぬよ、オレ。
瞼が重くなってきて、ごろごろと喉を鳴らしながら角都に包まれて目を閉じる。






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