novel2(BL book)

□視線
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まただ・・・。

またコイツはオレの事をみてやがる。





視線




もう三週間も雨が降っていない。
乾いた風は、人気の無い砂丘を歩くオレと飛段に容赦無く砂埃を浴びせ消えていく。
暦では春になったばかりだと言うのに暖かな春の日差し、というには程遠く太陽はギラギラとその熱を惜しみなく降り注ぐ。
・・・少しぐらい惜しんでくれても、感謝こそすれ咎めたりはしないのだが。
水が欲しい、と思ったが生憎この辺りには川も池も湖も、小さな水溜り一つ無い。
態々人の居ない所を選んで歩いているのだから民家などある筈も無く。
ならばいっそ、この先にあるアジトまで行った方が早いだろう、と太陽が照りつける中飛段と共に歩いていく。
黙々とアジトへ向けて歩を進め、オレの少し後ろに飛段がつく。

「・・・・・。」

「・・・・・。」

熱い砂を蹴り上げ二人で歩いているだけなのだが、鬱陶しい。
オレの背中に突き刺さる・・・違うな。
突き刺さる、というよりジリジリと焦げていきそうな飛段の視線がイラつくのだ。

「飛段。」

「あー?何ィ?」

振り向かず話しかけたオレにダルそうな声が返ってくる。

「オレの事をあまり見るな。気持ちが悪い。」

「みっ・・見てねーよ!」

「嘘をつけ。いつも後ろからジロジロとオレを見ているだろう。今に始まった事じゃない。もう大分前からだ。」

「・・・気付いてんなら早く言えよ・・つか、減るもんじゃねーしいいじゃねェかよ!」

「減るな。貴様に見られて身長が1ミクロン縮んだ。金に換算して5分500両。これからオレを見たら金を払え。」

「ハァ?!意味分っかんね!」

後ろを歩くイラつく因子と一見冗談のような、オレにとっては至って真面目な話をしながら歩いていく。

飛段がオレを見つめているその理由を薄々分かってはいたがそれを認めて許すには抵抗があった。
何故ならそれは・・・いや止めておこう。
認めるつもりは無いのだから考える必要も無い。

熱い砂の上をその後大した会話も無く歩き続け、日の暮れる頃にはどうにかアジトへ辿り着いた。

水を飲み、少し落ち着いた所で飛段を水場で待機させリーダーへ報告をしにいく。
水目当てでアジトへ戻ったようなものだ。
特に急ぎでも無い報告を事務的に済ませ飛段の元へ戻る。
だらしなく座り込み退屈そうな顔をしている飛段に声をかける為、一歩踏み出そうとした時トビとデイダラの、歩く騒音の様なコンビが飛段へ寄り、話しかけた。
飛段に声を掛け損ねたオレはその場から様子を見る。
ゲラゲラと下品に笑い合い話す三人。
飛段はデイダラとトビの顔を見て、たまに肩へ触れ柔らかく笑う。
それは楽しそうに。
オレの前であれ程無防備に笑う事があっただろうか。

今、飛段の瞳にはオレが写っていない。
いつも鬱陶しいくらいにオレをその明るい色の瞳に閉じ込めているクセに。
オレはイラつき飛段を呼んだ。
軽く手を上げてデイダラ達と別れ、傍に立った飛段に言う。

「オレ以外のヤツをあまり見るな。腹立たしい。」

「おめー、さっき自分の事を見るなっつってたじゃねーか。」

「覚えとらん。貴様がオレ以外のヤツを見ると身長が1ミクロン伸びる。精神衛生上良くないのだ。金に換算して5分1000両。これからオレ以外のヤツを見たら金を払え。」

「ハァ?!ミクロンとか訳分かんねーし、金額増えてるし!しかも縮んで伸びたんなら丁度いいんじゃね?」

文句を言いながらも柔らかく笑う飛段に、何だか負けたような気になる。

飛段がオレを見つめているその理由をはっきり分かってはいたがそれを認めて許すには抵抗があった。
何故ならオレも飛段を見ていたからだ。
臆病なオレは飛段の瞳の先に一喜一憂するそんな自分を覚られまいとしてたんだ。
クソっ!こんな事腹立たしくて言いたくないんだがな。


「飛段、お前はオレだけを見ていろ。」






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