novel2(BL book)

□赤い花
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赤い花


白い翼を大きく広げてゆっくりと羽ばたき始める。
徐々に高く上がって行き、風を掴んでそれに乗った。
オイラの耳元にはごうごうと空気を切る音。
この音がとても気持ちいい、うん。

もっと高く。
世界を見下ろせる場所へ。

晴れた青い空を、雨の淀んだ空を、雪の静かな空を、朝も昼も夜も飛び続けるんだ、うん。
大好きな、空。
そして疲れたら小さな枝に止まって休む。
目を硬く閉じて旦那の色を思って眠る。
温かい夢を見て腹が減ったら美味い木の実をつついて、それから随分前に旦那が教えてくれた綺麗な湧き水の泉で少しだけ水を飲む。
さらさらと流れる水の音が心地いい。
ここはオイラと旦那の秘密の場所。
喉が潤ったら白い羽を広げオイラはまた飛び立つ。
旦那が好きな朝焼けの空を、オイラが好きな夕焼けの空を。
さァ、今度はどこへ飛ぼうか。
旦那と歩いた砂漠でも目指そうか。

この世界のどこかに咲く、小さな赤い花を探して。







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