novel2(BL book)

□夜光蝶
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人気の無い初秋の森の中で、縋る様な甘い声だけが野鳥の羽音に混じり、オレの耳に響く。



夜光蝶



流れる雲の切れ端からオレの腕の中にいるヤツの髪と同じ色の月が顔を出す。

「う・・あッ!ひッ・・飛段・・そこは・・・ッ」

左胸の縫い痕に舌を這わせ下着の中へ手を差込んで敏感な部分にそっと触れる。
夜の物寂しい森には不釣合の、澄んだ海の様な瞳がオレを不安げに見つめているのを柔らかな月明かりが照らし出した。

「・・はッ、だ、駄目だってェ・・・う、ん・・」

「嘘つけ。ほら、ここ、こんなになって涎垂らして・・超喜んでるじゃねェか」

「ああッ・・!やァ・・・!」

動く指に期待をする様に首を大きく擡げたデイダラの自身をそっと撫上げると、女みたいな声をあげてオレの首に腕を巻きつけてくる。
ぬるぬると滑る先端を指の腹で刺激しながら甘い声を漏らす唇にそっと口づけた。
月色の髪が敷き詰められた落葉の上へ広がり、指の動きに合わせて身体を震わせている。

「欲しいの?」

意地悪く耳元で囁けば、青い海の瞳はゆらゆらと潤んでオレを見上げてきた。

「ほら、言えよ」

一気に着ていたものを剥ぎ取り羞恥で閉じようとする太ももを両手で押さえ、力を入れて開く。
露わになった濡れた自身は月明かりに光り、その奥の蕾はオレを誘うかの如くヒクついてやがる。

「欲しくて堪んねェって、こっちのオクチは言ってるぜ」

ぴちゃりぴちゃりと、わざと音を立てそこを何度も舐め上げて舌を差し込むと押さえていた太ももの震えが大きくなり、コイツは小さな可愛い声でこう言うんだ。

「飛段が欲しい・・うん・・・」

デイダラのそんな声を聞く度に身体は熱くなりながら頭の中は妙に冷めていく。
何故なら今デイダラを啼かせている指は、言葉は、舌は、全て角都がオレにした事だから。
昨夜はオレが角都にデイダラと同じ台詞を言ったんだ。

『角都が欲しい』

ってな。
そんな事とは知らずにデイダラは体内にオレを埋め揺さぶられながら声を上げる。
高揚したその声を聞きながら乱れた月色の髪をそっと撫でた。

「ひ、だんッ、飛段ッ」

髪を撫でた手を捕まえ、握ったまま何度もオレの名前を呼ぶ。

「可愛いな、デイダラちゃん」

耳元で囁いたその声にぴくりと反応し、オレをぎゅうぎゅうに締め付けてくる。
知ってるぜ。
今日のデイダラちゃんは昨夜のオレだから。
どうしたらイイのか、どうしたら達してしまうのか。
オレはもう一度耳元に唇を寄せて優しく言った。

「愛してる」

そしてデイダラが吐精し、快感に震える体内に自分も精を放つ。










身体が疲労感に包まれると、頭の中が更に冷めていく。
いつもの事だ。
デイダラもきっとそうだろう。
オレ達はこの場所で何度もこんな下らない背徳行為を続けている。
デイダラに暁の外套を羽織らせた後はいつも気まずくて、かといって、それを取り繕う為に必死に喋ろうとも思わなくて。
ただ二人で流れる雲に見え隠れする夜空の月を眺めているだけだった。
暫くそうしていたらデイダラがぽつり、と話し出した。

「夜光蝶って、見た事ある?うん?」

唐突な話しに一瞬訳が分からなくて答えられないでいると、デイダラは近くに落ちていた枯葉を一枚手に取り、指でくるくると回しながら話を続ける。

「旦那がさ、まだオイラと一緒にいた頃に教えてくれたんだ、うん。夜になると、こう、羽を光らせてさ、群れで飛ぶ蝶がいるんだって。でもそれはとても珍しくて人目に触れる所には滅多に出て来ないし、その生態も研究途中で略分かって無い様なもんだから、どこに巣があるのかって事も勿論誰も知らないらしいんだ、うん。けど旦那が単独任務で水の国へ行った時、無人の島の奥地にある密林で飛び回る夜光蝶の大群を偶然見つけたって、うん。凄ェ芸術的で忘れらんねーからオイラにも見せてやるって、多分その場所に巣があるから連れてってやるって言ってたのに旦那は死んじまって結局連れてってくんなかった、うん」




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