novel2(BL book)

□夜光蝶
2ページ/2ページ



「ふーん・・・でも、光るだけで只の虫だろ?そんなのが見てーの?だったら、近く行った時にでもオレが一匹獲って来てやるよ。沢山飛んでんだろ?」

「違う。そうじゃなくて・・・見に行きたいんだ、飛段と。うん。」

「二人で無人島へチョウチョ見に行くってェ?そりゃまた・・悪ィけどそこまでサソリの代わりにゃなれねーぜ、オレ。自分で言うのも何だけどよ、芸術とか全ッ然!分かんねーし。・・・身体をお互いの相方の変わりに出来てもそういうのは、さァ・・・」

「飛段を旦那の変わりになんて思った事ねーよ、うん。・・・話す事は下らねーし見た目は馬鹿っぽいし・・セックスだって・・何かしつこくてさ、年寄りくせェ、うん」

「あっそ。じゃあ別のヤツと行けよ。あ、トビでも誘ってやりゃ喜ぶんじゃねーの?せんぱあい、せんぱあい、つってな」

「だから!飛段と行きてーんだよ、うん。・・・旦那は物知りで、綺麗で、強くて、冷てェけど優しくて、大好きだったけど傀儡だから、飛段がどう思ってんのか知んねーけどオイラ旦那に抱かれた事はねーよ、うん。お前が角都に相手して貰えなくて寂しい時にオイラを抱く事も知ってるしな。けどそれでもいいって思ってるから。どんなに優しくても触れれば冷たい旦那も、どんなに温かい体温のある身体で包んでくれても心は角都にある飛段も、オイラにとっては大した変わりはねェって、うん。だから・・・」

長い月色の髪と震える肩をオレは思わず抱きしめた。

「ごめん」

呟く様に言った言葉は風が揺らした森の葉音でデイダラの耳に届いたのか届かなかったのか、それは分かんねェ。
でも届かなかったのならその方がいいかもしれない、と何となく思った。
デイダラはオレの腕の中でじっと動かないまま、

「オイラ、自分で思うより飛段が好きかもしんねェ、うん」

と小さな震える声で言った。
ずっとデイダラも同じなんだと思ってた。
オレをいなくなったサソリの身代わりにしてるんだと・・・。
もし言い訳させてくれんならオレだってさァ、嫌なヤツは抱かねーよ?
譬え誰かの変りでも・・違うんだぜ。
誰でもいい訳じゃねェ。
やっぱ、オレなりに気ィ使うし、そりゃ角都の真似もいっぱいしたけどよ。
でも、さ。

「オ、オレの童貞、デイダラちゃんにくれてやったんだぜェ・・・」

「・・・はぁ?!嘘、だろ?お前百戦錬磨のジジィみてーなテク使うじゃんか、うん?!」

「あー・・・あれは・・どっかの百戦錬磨のジジィの真似で・・突っ込まれる方はあっても、突っ込む方はデイダラちゃんが初めてなんだぜ、ホント。マジ本気で・・」

顔が赤いのが自分でも分かる。
本当の事を言ってしまった恥ずかしさでどんどん声が小さくなり、デイダラはデカイ青い瞳を更に大きく見開いてオレを見る。

「笑いたきゃ笑えよ」

半分ヤケクソで言った台詞に素直な大笑いが返ってきて少しムカついた。
笑い声が煩くてデイダラを抱きしめたままだった腕を放そうと力を緩めると、今度はデイダラが細い腕でオレの腰を強く抱いてくる。
そのまますっ、と風のようなキスをしたデイダラに驚きその顔を思わず覗く。
するといつもの強気な瞳は何だか弱々しく潤み頬を紅く染めて、

「オイラも飛段に後の処女を持ってかれたしな、うん。おあいこ」

と言って笑った顔が凄ェ可愛くて、またチンポ立ちそうになったけど今は雰囲気的にヤバイだろ、と気合で押さえきった事は黙っておく。

「夜光蝶、オレが連れてってやるよ」

そう言うと静かに頷いたデイダラの手をとって、オレ達は月明かりの森を少しだけ遠回りしてアジトへ戻った。















正直、オレはやっぱ角都が好きだ。
どんなに殴られても冷たくされても気分でオレを抱くだけでも。
それでも角都がとても大事だし、任務においてツーマンセルの相方としても信頼している。
だけどデイダラを可愛いとも思う。
角都のものでありたくてデイダラを腕の中から逃したくない。
分かってる。
それがただの自分勝手だって。
オレの身体の痛みは快感に変る筈なのにいつまでたっても快感にならないこの痛みは、何?
ジャシン様。
これが罰なのでしょうか。
罪には罰。
それでもいいよ。
オレ、ちゃんと罰は受けるからさ。



ひらひらと闇に淡く光る夜光蝶。

角都に心を縫い付けられたまま、青い瞳の海で溺れる。





(THANKS ICHIKO!!)

前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ