novel(夢book)
□願い事
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月の砂漠に
金色の
駱駝が一頭。
願い事
あれはいつだったっけ。
確か一尾を捕獲しに行く時だ。
「なぁ、旦那!芸術的な景色だな、うん」
まるで古い歌の1シーンの様なその景色にオイラの心が動いた。
「壊してェな・・うん・・・」
ウットリと呟くオイラに旦那は言ったんだ。
「オレの永久の美の中にお前の言う一瞬はあるが、お前の一瞬の美の中にオレの永久は無い」
オイラは黙った。
いや、言い返そうと思えばいくらでも言葉は繋げたけれど、
何か・・・どんなに言い返しても旦那にまともに話してもらえる事が言えない気がした、うん。
そんでオイラと旦那はまた二人で砂の世界を歩き続けた。
いつまでも終わらない砂漠の中で寧ろこれが永久なんじゃねェか、と憎まれ口を聞いてやりたかったが、風に舞い上がった砂が月に透けて銀色のベールをオイラと旦那に被せたのでまたしてもオイラは口を開く事を止めたんだ。
何故なら旦那が笑った様に見えたから、うん。
「これからオイラは自爆する!!」
あの日の事はつい昨日の事のようにも、もう何十年も前の事のようにも思える。
旦那はあの時オイラの一瞬の美の中に旦那の永久は無いと言った。
でも・・そうでもねェと思うぜ、うん。
「死んでオイラは芸術になる!今までに無い爆発はこの地に今までに無い傷跡を残し・・・そして、オイラの芸術は今までに無い称賛を受けるだろう!」
オイラが見せる最後の芸術の後には全ての命が消え失せる。
深く枯れたその場所に命なんてものは二度と生まれない。
「そしててめーは確実に死ぬ!!半径10キロが爆発範囲だ!逃げきれりゃしないぜ!うん!!」
無に還る永遠の焼け野原。
その無機質で芸術的な焼け野原をアンタに捧げるよ、うん。
「さぁ怯えろ!!驚嘆しろ!!絶望しろ!!泣きわめけ!!」
そんで、さ。
そこに風に運ばれた砂が落ちるとするだろ?
それがずっと、ずーっと続いてその場所があの日の様な砂漠になったら。
月に光る金色の駱駝を一頭置いてさ。
それはもう永久なんじゃねェのか、うん?
また違うって怒られるかね。
「オイラの芸術は・・・」
でも、オイラ旦那とあの砂漠をもう一度歩いてみたいんだ、うん。
「喝!!」
もう一度だけ・・・
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