novel(夢book)

□移動遊園地−それは雨天決行−
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突然、大声で呼ばれ驚きに足が縺れた。
ポケットの中の手は悴んでいて咄嗟に出ない。
ばっしゃーん!と豪快な音を立ててオレは顔面から泥の中へ突っ込んでいった。

「・・・何やってるの、長門?」

小南が眉間に皺を寄せてオレを見る。
いや、元はと言えば全て小南のせい・・・
と言ってやりたかったが、最近の小南は忍術が上達するのに比例して性格も強くなっているので、あまりヘタな事を言うと後が怖い。

「何でもない・・ごめん」

アレ?何で謝ってんだ、オレ?
無意識に出た言葉に疑問が湧く。
オレ忍なのに無意識に謝ってどうすんだよ?
巡り出す情けない疑問に囚われながら、泥の中から這い上がる。

「・・・ね?弥彦!長門!」

「あ・・ごめん、何?」

うわ、また謝っちゃったよ。
何かオレ、謝るのクセなのかな。

「えー!聞いてなかったの?だからァ、コレ!」

小南は先程拾った紙をオレの目の前に向けた。

「移・・動・・遊園・・地?えっと・・明日ヨリ広場ニテ・・・」

「そう!行こうよ!長門!ね?いいでしょ、弥彦?」

小南は弥彦を振り返る。
弥彦は渋い顔をしている。
でも・・・オレも行きたい!移動遊園地!
毎日任務、任務で遊ぶ事なんか無くて、勿論それはとても大事な事で、任務をこなす度に強くなっていってるのも実感出来るし嬉しいんだけど・・・
行ってみたい、移動遊園地。
前に見た事がある。
オレと同い年位のやつが父さんと母さんと一緒に綺麗な金平糖食べながら、キラキラ光る移動遊園地から笑いながら帰ってくの。
オレさァ、ちょっと羨ましかったんだ。
ちょっとだけ!だけどね。(ここ重要!)
だからさ、オレ、綺麗な色の金平糖食べてみたいんだ。
それに小南と弥彦の三人でいっぱい遊びたいよ。

オレも小南と一緒に弥彦を見る。
オレ達の決定権は全て弥彦にある。
それは弥彦がオレ達より一つだけ年上というせいもあるが、それよりもオレ達の面倒を見てくれて、いつも守って助けてくれる、そんな兄さんみたいな存在だから。
オレ達は弥彦に頼り過ぎている所もあると思う。
でも・・・弥彦がいるからどこにいても安心出来るんだ。

オレは期待の眼差しで弥彦を見る。
あまりに見つめ過ぎて輪廻眼がグルグル回ってしまった。
弥彦は腕を組んで暫く何か考えていたけど、オレと小南に根負けしてとうとう首を縦に振った。

「「やったあ!!」」

オレと小南は雨の中はしゃぐ。











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