SS
□キスマーク【寺伝洸弍】
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※このSSは妄想を読んでからご覧ください
ある日の昼休み終了後、
図書室の個室の隣にある準備室で寝ていた俺は、個室に誰かが入ってきたのに気づいた。
「誰だよ授業サボってるやつは…」
まぁ俺も人のこと言えた立場じゃねぇけど。
窓から個室を覗き込むと、そこには個室のソファーへ押し倒された大空と、馬乗りになった帝真竜がいた。
二人が親友だっていうのは知ってる。
仲が良いのも事実だ。
―まさか、そんな関係であるはずがない…
そう思っている間、二人はキスを始めた。
何を言ってるかは全く聞こえないけれど、大空はシャツを脱がされ、肌を吸われ、行為が続く…
それからは、見れなかった。
帝真の喘ぐ声がたまに聞こえ、俺は両耳をふさいだ。
―…俺の大空を、取らないで。
しゃがみこんで震えている自分がいた。
大空は俺を好きだと言ってくれた。
でも俺は大空を嫌いだと言った。
本当は好きなのに、嫌いだと言った。
真実を言えば、大空が追放されてしまうから。
だから、離れたのに。
帝真は確かに男からもウケがいい。
狙ってるやつは多々いる。
もう大空は、俺のことなんて諦めたんだ。
だいぶ時間が経ったあと、もう一度個室を覗き込むと、帝真が大空にキスマークをつけていた。
そして大空は笑いながら逃げる帝真を追い掛けて捕まえて、後ろから抱きしめて、しばらくして図書室から出ていった。
楽しそうに笑って、ふたりで。
嫌いだと言ったのは俺。
大空から離れたのも俺。
なのにどうして、こんなに胸が痛むんだろう。
しかも次の授業は2年6組と合同でドッヂボールをすることになっている。
大空のクラス。しかも、足利槞唯もいる。
見たくないのに、なんでまたこんな・・・
サボりたかったけど、さすがに2時間サボるのは生徒会役員としてダメだと思い、嫌々ながら参加することにした。
定刻になりジャージに着替え体育館へ行くと、山田雅鷹が張り切っていた。
「今から学年対決ねー!あ、でも嵐くんだけは体育館の隅っこで竹馬ね♪」
「ちょっ、マサやん!何でっすか!!」
見たくないのに、目立ちやがる。
帝真がすかさず大空を慰める。
その姿が、痛い。
みんな笑ってるってのに、笑えてないのは俺だけだ。
早くこの時間が過ぎればいいのに。
俺は担任である山田雅鷹に寄り、見学したいと申し出た。
「見学?ダメだよ一応授業なんだから。外野やりなよ!外野!」
「外野…」
外野で動かず何もしないでいればいいか、と思った。
でも外野になって気づいたことがある。
「嵐!当てろ当てろ!」
外野の方が大空に近いってこと。
大空が動く度に見えるキスマークが痛い。
もう早く終わればいいのに、
つうか、吐きそ―…
「洸弍くん?体調悪い?」
審判をしてた山田雅鷹が俺に駆け寄る。
気持ち悪いのと胸が苦しいのもあって、思わず山田雅鷹にしがみついた。
「気持ち悪い?横になる?」
山田の問いかけに頷くことしか出来なかった。
この場から早く去りたい。
大空を見てると苦しくなるから。
「ルイちゃーん。俺、洸弍くん連れてくからあとヨロシクー」
あとの記憶は無い。
目を覚ますと、俺は保健室のベッドに寝ていて、山田雅鷹が携帯をいじっていた。
俺が体を起こすと、山田が俺に気づいた。
「あ、気分はどーお?」
「あ、大丈夫…です」
「洸弍くん最近元気ないけどどうしたの?俺には言えないこと?一応、担任なんだけどなー」
「……」
山田は黙る俺を抱き寄せて髪と背中を撫でながら言った。
「無理に言わなくていいよ。あ、今週の金曜日ね、愁ちゃんとアヤちゃんと飲みに行くんだ。一緒に行く?元気になるんじゃない?」
たまにこうやって山田から誘われたりする。
俺はいつも決まって「嫌だ」と答えるのに、今回はなかなか断れない。
一人でいたって大空のことしか考えられないから。
だったら誰かと一緒にいて、時間が早く過ぎるほうがいい。
「行く」
「OK。じゃあ俺は体育館に戻るから、もう少し寝てなね」
山田が出て行ったあと、俺は再び眠りについた。
大空と帝真のあの光景を思い出しながら――…
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