小説

□偏愛V
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空を見上げる。



朝の空

昼の空

夜の空




空を見上げれば貴方はいるんでしょう?



独りになった俺を、空から見下ろしてくれてるんでしょう?




ねぇ、ひー兄



俺の哀しみはまだ消えないよ。




まだ、消えない…







「竜、風呂沸いたぞ」


「うん」


「風邪ひくから早く入れ」



ハルカさんに呼ばれて部屋の中に入る。



ハルカさんと一緒に住むようになって3ヶ月が過ぎた。



体を重ねるようになったのは最近。



ハルカさんに抱かれるのは嫌じゃない。


ハルカさんのことは好き。



でも、恋愛感情とは違う。




「寒いね。雪降るかなぁ?」


「1月だから降ってもおかしくねぇな。雪好きなのか?」


「うん。好き…んっ」



湯舟に浸かりながら他愛もない話をしていると、ハルカさんにキスをされた。



ハルカさんのキスは強引だけど、すごく気持ち良い。



先に進みたくなるようなキス。




「竜…体重戻った?」



ハルカさんが俺の脇腹の肉を掴んで言った。



「ちょ、掴まないでっ。最近は逆に太ったかも。ハルカさん肉料理ばっかなんだもん」


「人間とりあえず肉だ、肉」



ハハハと笑うハルカさんの笑顔が可愛い。



いや、俺がハルカさんを可愛いって言うのはおかしいけど。



すっごいクールな人だと思ってたら、そうでもないみたい。



うちの学校の数学教師の哀沢先生と同じ兄弟とは思えないくらい無邪気。








「あっ…」


「何考えてんだよ」



ハルカさんが俺の乳首を舐めながら問いかけをした。



「や…吸わな、いで…あんっ…あ、哀沢先生のこと」


「…なんでよりによって兄貴のことなんだよ」



ハルカさんは俺の発言にちょっと笑った。



そして再びキスをする。





ハルカさんは優しい。



だから、好きだと言われて困った。



俺はひー兄以外愛せないから。



だから断った。



そしたらハルカさんは「またか」って笑いながら返事をした。




切ない笑いだったのを覚えてる。



その意味を俺は聞けなかった。








「はっ…ん」



ハルカさんのキスだけで溶けてしまいそうな自分がいるのに最近気付いた。



でも、心は微塵も動かない。




「もっと、して…」



要求する俺

受け入れる彼




ハルカさんが俺を好きだと知っているのに、止められない。


欲情する俺はなんて最低なんだろう。




ハルカさんがキスを止めて俺の顔を見た瞬間、インターホンが鳴った。








「ハルー!ハル!ハル!ハールーカー!!開けてよぉ!哀沢さーん!!」





ドアを叩きながらハルカさんを呼ぶ声がした。



「…あの野郎」




ハルカさんは舌打ちをして、キレながら玄関へと向かった。





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