小説

□純愛FINAL
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出会ってどれくらい経ったんだろう。



もう終わりにしよう。



弱くなっていく俺を見られたくないから、




だから今日で最後だよ―…












窓辺から差す日差しに溶けてしまいそうだ。




白いこの部屋も、居心地が良いのか悪いのか分からない。




薬の量も増えた。



食欲もない。




あと何日、同じ毎日を過ごすんだろう。





「ひー兄」


「竜」



弟の竜が見舞いに来た。


竜の隣にいる人物は、初めて見る人だ。




「ひー兄、哀沢先生の弟のハルカさん。MARLITERALのベーシスト」


「へぇ、哀沢の…そういや弟はバンドやってるって前に言ってたな。MARLITERALだっていうのは初耳だ」



数学教師の哀沢の弟だったのか。



言われてみれば、雰囲気とか似てるかも。



MARLITERALってのは、芸能関係に詳しくない俺でも知ってるバンドだ。



哀沢の弟って凄かったんだと実感した。




「あ、なんだろ…ちょっとごめん。メンバーから電話かかってきちゃった……はい、もしもし」



竜の携帯が鳴り、慌てて竜は部屋から出ていく。



白い部屋に残されたのは俺と哀沢の弟。




話かける言葉が無いんだろう、ハルカさんは窓の外を眺めていた。








「俺、もうすぐ死ぬって知ってます?」




沈黙を破った俺はハルカさんに話しかけた。



彼はそれに少し驚いて振り返った。



「それ…竜から聞いてる」




言うなって言ってあるのにな。



ハルカさんは、竜が心を開いてる人なんだと理解できた。




「俺は死ぬのは怖くない。けど、俺が死んで竜が後を追ってこないかが心配で…。あいつには俺しかいない。っていうか、竜はそう思い込んでるから…」



異常過ぎるくらい、竜は俺を居場所にしてる。




だから、心配なんだ。





「後なんか追わせねぇよ」





意外な言葉だった。



嬉しかった。





俺は「ありがとう」と小さくつぶやき、それからハルカさんに昔話をした。



この人になら竜を任せられると思ったから。




なぜ自分がこんな身体になったのかとか、竜の過去とかを話した。



竜は中学にあがった頃に、父さんに犯されていた。



母さんに顔が似ていたからっていうのが原因で。




「父さんに縛られて、いつも無理矢理だったらしい。竜は誰にも言えなくて、たまに会う俺にだけ言ってくれて。だから寮のあるMY学園を勧めた」




常に自分を守ってくれたのは俺で、だから俺を居場所にしてしまっている。



竜の異常なくらいの愛情が、たまに不安になるんだ。



俺がいなくなったら狂ってしまうんじゃないか。




そんなことを思ってしまう。






「安心しろよ。お前の代わりに俺が竜を守るから」


「頼もしい。あ…俺が死んでも、音楽だけは続けて欲しいな。あいつ才能あるから」



まるで遺言を言っているかのように俺は話し始めた。




「あとは…笑ってて欲しいな」



誰も悲しんで欲しくない。



特に、家族には。



だから堕ちないで欲しい。




俺のせいで悲しまれるのが、一番辛いんだ。




「俺が守るから安心しろ」


「…お願いしようかな。これで心置きなく逝ける」


「あぁ。引き受けるよ」




兄貴として何もできなかったけど、



最後に竜を頼める相手に出会えて良かった。





竜を、頼みます。





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