小説

□狂愛《愁弥side》
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綾と体の関係になったのは中2の夏だった。



女遊びの激しい綾に言った一言がキッカケになった。




「女遊びをもう少し控えた方がいいんじゃないか?」



「じゃあ愁弥、お前を抱かせろよ」




女に飽きたから男に興味が出たのか?



俺が相手なら孕ませる心配がないし、



それに何より、



綾の特別でいられると思った。



だから引き受けた。



条件を出して。





「好きな人が出来た場合は、この関係を終わりにすることが条件だ」


「わかった」




俺は綾が好きだから、この関係が終わることはない。



綾が誰かを好きにならない限り、それまで綾は俺を抱いてくれる。



お前は知らないだろう。



こんなにも近くで想っていることを。




綾が誰かを好きにならない限り、こうして一緒にいられるんだ。




不安なことは何も無かった。



―…はずなのに、




「アヤちゃん!」


「雅鷹!資料持ってきたか?」


「バッチリ!」




高2になった頃から不安が増加した。



山田と哀沢と同じクラスになれた時、綾は嬉しがっていた。



1年の頃は二人とクラスが別だったから。



俺は山田とは幼い頃から父親が主催する懇親会で会っていたから、仲は良かった。



無邪気で素直で良い奴だ。



だから高校が同じで、クラスが同じで嬉しいはずなのに。




最近の綾は山田とばかり話していて、前に比べて俺との会話が減った気がする。



「愁ちゃん、どうかしたの?元気ないよ?大丈夫」


「大丈夫だ」



旅行のパンフレットを毎日のように広げて見ている二人。



もしかしたら綾は山田を好きなのかもしれない。


それなら俺は身をひくだけだ。



綾の『特別』でなくなるだけ。




ただ、それだけ。




「愁弥!」




綾が俺に紙を渡す。




「この映画の続編見たいっつってたろ?前売り券買ったから公開したら見に行こうぜ!」


「あぁ」


「まぁ公開は2ヵ月後だけどな。混むの嫌だから7月13日の金曜にしようぜ。レイトショーな。予定空けとけよ」


「わかった」


「俺が連絡するから、そしたら俺んち来て一緒に映画館まで行こうぜ」





こんな会話でさえ俺は嬉しかったんだ。





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