詩A
□knowing
1ページ/1ページ
あの日たしかに
自分から手を離した
引っ張ってくれるてのひらは無くなって
開いたままの手
冷たくなってゆく
もうきっと
あの家には帰らない
離れないようにと
強く握られていた手
その感触を ぬくもりを
忘れないよう
固く固く拳をつくる
冷えた拳に息かけて
一人ここに立っている
帰り道なら知っている
きっと変わらぬ人が待っている
行くべき場所も知っている
ぼんやりと不透明な景色が見えている
知っている
知っている
けれど
まだここに留まっていたい