マ文

□銀の星を見上げて
1ページ/6ページ

ふと近くにあったぬくもりが遠のいていくのを感じて、少年は目を覚ました。
 少年、というのにもまだ幼い感のある子供だった。
彼は失われたぬくもりを求めて、眠気で少しふらつく足で寝台から抜け出した。同時に、ひやりとした夜の空気が体を包む。
「ははうえ……?」
窓から入ってくる月明かりで、部屋は全くの暗闇ではない。とりあえず少年は、唯一の光源である月明かりが漏れている、テラスへと続く大きな窓へ行こうとした。
月明かりでぼんやりと明るいとはいえ、広い室内を隅々まで照らしてはくれない。手探りで進むには骨が折れた。あと少しで窓に手が触れるという距離までくると、それが開かれていることがわかった。開かれているというより、閉まりきらなかったという様子の開き具合だったが。
なんにしても外に人がいるのは間違いないと、少年は少しだけ開いた扉をそっと押した。手入れが行き届いているおかげか、扉は音もなく外側へずれた。
そこには、椅子に腰掛けながら夜空を見上げる女がいた。金の巻き毛が月明かりを受け、美しい光沢を放っている。
少年が母と呼ぶその人である。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ