マ文
□救世主
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「ケーンちゃーん」
いつも通りに学校へ通い、いつも通りに予備校に行く。そんな普段となんら変わらない、平日の夕方。
昨日と違う点を挙げるなら、授業の内容が少し進んで、予備校に行く前に食べるファミレスのメニューが変わったくらい。
間延びした声に呼ばれたのは、残ったサラダをつついていたとき。
「ドクター?」
「コンバンハだねケンちゃん。一人かい?」
「うん、そこいいよ」
「ありがとう」
勧めた席にいそいそと腰を下ろすのは、くたびれた服を身につけた黒人。ある意味本当のダメージジーンズだ。
「また随分ラフな格好してるね」
「まあね。あ、すみませーん」
彼の呼びかけに応じて、若い店員がやってきた。必要以上の笑顔を浮かべながら注文をとっていく。
頼んだコーヒーはすぐに運ばれてきた。そして店員はマニュアル通りの営業スマイルのまま去っていく。
「今日は本業とは別の用事で来たんだ。例のあれね」
「もしかしなくてもこれから秋葉原?」
「ピンポーン!さっすがケンちゃん」
コーヒーにミルクと砂糖を入れながら話すドクターは、子供のようにはしゃいでいる。