「とおるっ!」


雲ひとつない青空の下、私の声はちゃんと少し前を歩く彼に伝わったみたいで、いつもの柔らかい笑みを浮かべてこっちを振り返る、徹。

「なに?」と心地の良い声で返事をされると、私の胸は嬉しさでキュンとなって、身体が勝手に動き出して彼の隣へ並ぶ。



「あついよ、」

「そりゃ、夏だし」

「徹が手繋いでくれたら、涼しくなるかも〜」

「なる訳ないだろ?」



そんなこと言いながらも、指を絡めて手を繋ぐ徹の優しさが掌から全身へ伝わってくる。



「な、暑いだろ?」

「えー?涼しくなったよ」

「手汗かいてるのに?」

「ちょ、徹ひどいっ!」

「冗談だって」



手汗とか一番気になるのに、なんて思いながらも彼の笑顔にやっぱり負けてしまう私。

その笑顔は、私の天敵。

だって、私の心臓がおかしくなっちゃいそうなんだもん。


だから、もっと笑って?

私に、たくさん徹の笑顔をちょうだい?



「とおるー!」

「ちゃんと聞こえてるから、声大きいって!」

「だいすきーっ!」

「だ、だから大きい…っ」



顔を真っ赤にしながらそう言う徹。

でもね、知ってるよ?



「俺も、ちゃんと好き」



その言葉も、笑顔も全部欲しい。

欲張りな私を許してね?


 * end *






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