駄文

□彼がいつも金欠な理由(ワケ)
1ページ/2ページ













彼がいつも金欠な理由(ワケ)









檜佐木修兵という男は謎の多い男だ。

その最たるものが左頬に彫られた『69』の刺青。

あの綺麗な顔にそんな意味深な数字を彫った経緯を俺は知らない。

院生時代から数えて五十年を越す短くない付き合いだが未だにその意味を聞き出せていない。

何度も飯を食っている時に、酒の席で、時には叱責される事を覚悟で仕事中中にも尋ねたがいつも答えは同じ。

決まって一瞬寂しそうな表情を浮かべた後、すぐにいつもの感情を読ませない表情に戻り言うのだ。

「別に意味なんかねーよ」

それだけ言うとそれ以上の質問を拒絶するかのようにあからさまなまでに話題を逸らす。

更に食い下がると不機嫌そうに席を外すのだ。

それでも俺は同じ問いを繰り返す。

いつまでも変わらぬ答えはそのまま先輩との縮まらない距離を示しているようで。

いつか答えてくれた時が俺と先輩の距離が縮まった時だと淡い期待を抱きながら俺はこれからも同じ問いを続けるだろう。










次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ