長編モノ。

□04
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[宿命的な出会い]


ーそれから、
まだ数分もしない内にゴールドが自身の分とで二人分のお茶を用意して部屋へと戻ってきた。

「はいよっ、と」

「あ、ありがとう‥」

熱いから気をつけろよーと言いその人物の目前のテーブルにお茶を置くと、その隣に何の躊躇もなくゴールドが自身の分のお茶を置き胡座でその場に座り込む。

「‥‥」

その人物は、差し出されたお茶に映る自分自身の顔をぼんやりと眺めていた。しかし‥その表情はなんだか客観的に見ても分かるくらいに物悲しい雰囲気をしていた‥

「‥‥そういや」

「‥?」

ふいにゴールドがその人物に話し掛ける。その声にハッ!と我に返ったのか慌ててゴールドのを顔を見ながらどうした、と問いかける。

「‥いや、
そういやさ‥まだ名前とかって、聞いてなかったよなぁー‥と思って」

「あ、
因みに俺の名前はゴールド!」

「‥俺は‥シルバー、だ‥」

「お!シルバーか!よし‥んじゃあ、今日からおめーは名前のシルバーと友達のダチ公とを合わせて‥シル公だ!」

て事で、これからよろしくなシル公!とゴールドがシルバーの手を握りブンブンと握手の要領で上下に振る。彼のネーミングセンスはさておき、シルバーも少々戸惑いつつ、最後にはこちらこそ‥よろしくと言葉を返した。


***


「‥ところでさ、シルバー
おめー自分が何でこの家に落ちてきたのか記憶にねーの?」

唐突な質問に、シルバーはきょとんとする。仕方がない。何しろ今のシルバーにはゴールドの家に落ちてきた理由はおろか、そもそもどうしてそんな高い位置から落下してたのかさえ記憶にないのだから‥

「‥すまない、
当の俺も良く分からないんだ‥」

彼の記憶があやふやになる直前、
確か自宅にいた。そして、姉であるブルーという女性と何かを話していて、彼女が出掛けるというので見送り自分は自宅にいた‥筈。

「‥成る程なぁ、
要するにおめーが覚えてんのは自分ちに居たってトコまでって訳だ」

「‥そうみたいだ」

「‥うん。残念だが、
それだけじゃあ全然わかんねーや!」

「‥だろうな」

何かこう‥他に覚えてる事とかねーの?ホラ、断片的でも何かありゃあそこからちょっとずつ記憶が蘇えれば‥ひょっとすると‥とゴールドが更なる情報を煽る。

「‥そうだな、何か‥」

よし‥少しでも思い出せるよう頑張ってみるから、
時間をくれとシルバーが言う。

「‥‥」

「‥‥‥」

「‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥」

「‥」

「‥‥‥‥あ、」

そういえば‥とばかりにシルバーが声を上げる。

「おっ!
何だ?何か思い出したのか?!」

「‥ああ、確か‥
ブルー姉さんを見送った後で‥俺は自室に戻って、
それからーそうそう。部屋の扉の近くに見覚えの無い刀があって‥何だと思ってそれに近付こうとしたら急に視界がぐらぁっと歪んできて‥」

「‥ん?刀?」

「‥そうだ」

「‥もしかして、その話の通りだとすると今おめーが普通に握ってるその刀がー?」

「‥まあ、そういう事になるな」

「‥って、それそんなに出処の怪しい刀だったんかいっ!!」

ベッドから起きた時にあんまり自然に掴むもんだから、てっきり前々から持ってる大事なもんかと思っちまったぜ!とゴールドが激しくツッコミを入れる。

「‥て、いうかさ‥
シルバーちゃんよぉ‥」

「‥何だ?」

「いやほら‥何かおめーえらくしれっと反応してっけど、それ絶対危ねぇヤツだぞ‥?出来る事なら、早いトコ手放さないと後々で間違いなく厄介な事が起きる類のヤツだぞ‥?」

「‥まあ、それは‥」

そうなんだが‥とシルバーが何やら
歯切れの悪い返答を返してきた。

「だが‥何だよ?」

「いや‥何というか‥その、
この刀‥見覚えない筈なんだが‥持っているとやけに懐かしい感じがするんだ‥」

「‥は?」

「‥俺も良くは分からないが、まるで俺が手にする以前‥ブルー姉さんがこれを使っていたような気がするんだ‥そんな感じのイメージが頭に勝手に入ってくるんだが‥それが凄く心に響くというか‥」

「‥ふーん、まあ、
詳しい事は分かんねーけど‥さ、
とりあえずシルバーが超が付くシスコンなのは良く伝わってきたぜ!」

「なっ‥!?
だ、誰がシスコンだと!?」

次の瞬間、シルバーが顔を真っ赤にしてこちらを睨んできた。
それから無防備なゴールドの頭をその刀の鞘の部分で軽くごちっ!と叩く。いってぇ!何すんだよシル公!とゴールドが文句を言うとシルバーは一言「五月蝿い馬鹿!」と柄にもなく大声で叫んでそっぽを向く。

「‥くっそぉー‥
だからってそんなムキになるこたぁねーだろうがよぉ‥」

全く‥大人気ねーなぁシルちゃんは‥とゴールドが言うと「‥お前の方こそな」とシルバーが即答する。
何とか言い返してやろうと思うも、実にその通りであるのでそれ以上は何も言えないゴールド。

「‥くっ!」

「‥‥」

勝負あったな?とばかりにシルバーがドヤ顔でゴールドを見やる。
何て‥他愛もない事をしていると、
突然、ゴールドの家のインターホンが鳴り響く。

「‥あり?」

‥そういや、確か母さんもクリスも家に居なかったので帰ってきたかな?とゴールドが言うと「はいはーい、今行くぜー」と大声で叫んで部屋から出る。

「あ、おいゴールド!俺はー‥」

「おめーはそこで待っててくれりゃあ良いから!」

‥丁度、出ていくにはうってつけのタイミングだと思ったのだが‥
仕方がないので、言われた通りその場にまた座り折角出されたお茶を飲んで彼が戻るのを待つ‥


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