ぽけ&すぺ

□俺の世界に、もうアイツはいない。筈なのに…
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「…またか…」





…これで何度目だろうか



少なくとも、片手ではもう数え切れないくらいはある。




「…またあの夢だ…」




俺は夢なんていちいち覚えちゃいない。
…でも、この夢だけは気味が悪い程リアルで、何度襲われても、慣れないし、何より、他の夢と違っていつも同じ場面に始まり、同じ場面で終わる。全く進歩の無い夢だから、嫌でも脳裏に焼き付いて離れない。



「…ニューラ…」



いつからだろうか、俺も覚えてない程前から、俺が寝ている間は、側にいつもニューラがいてくれている。

夢から覚め、横で寝息を立てているニューラを見ると、あの夢から解放されたと一瞬だが安心する。


だが、いつも直ぐに夢の事を思い出し、段々寝ていても起きていても大差ない気分になってきた。



―嗚呼、アイツがいるだけで、こんなにも苦しめられるとは―



「…アイツなら、もう居なくなった…筈…なのに…」



…何だろう…




幼少の頃からアイツ…いや、"氷仮面"の支配下に置かれた時から既に、アイツの存在が、俺の脳裏に"痛み"や"憎しみ"等といった感情を植え付けていったに違いない。




つくづく嫌な気分だ。



まるで、"氷仮面"の"肉体"は滅んだが、存在自体は何一つ消えちゃいないみたいだ。うんざりする上に、頭が重過ぎて吐き気がする。



「…もう、居ないのにな…
…ねぇさんだって…もう、自由になれたのに…な…」



俺の中で、こうした感情が残ったままだと、どうしても姉さんの事が気掛かりで仕方ない。



…もしかしたら、ねぇさんも俺と同じように、自身の中の"氷仮面"の存在に苦しめられてるのではないか



―俺は、一体、どうすれば良いのだろう。奴が生きているならば、奴を討てばいい。でも、奴はもう存在しない。実体が無い者を討てはしない。


夢の中は…奴が俺を手招きしていた。



「…俺は…俺は…」



―逃げられない、内面からの支配に、俺はこうして毎日苦しむ。


俺の心がもっと強く、しっかりしていれば、奴は消えるのだろうか。分からない。分からない。でも―



「…恐い…」



俺は、震える手を伸ばし、ニューラを引き寄せ、強く抱きしめた。ニューラの額には、雫が落ちる。



ニューラは、何も言わずにハンカチを取り出し、俺の目を拭った。





―END―
 

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