ぽけ&すぺ
□さ迷える魂への鎖魂歌
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(※クリスの片思い設定。)
―思い起こせば、それはもう"恋"だったのかも知れない…。
…ゴールド。
性格や態度や言動から何から何までいい加減。
お気楽だし、無鉄砲だし、破天荒だし。
…そりゃあ、最初は何考えてるのかも分からないわ、意見が噛み合わないわで何度も同じ事で言い合いばかり。
「もう!貴方っていっつもいい加減なんだからっ!!」
―でも、出会ってからは、言い合いながらも同じ目的を果たしたり、一緒に行動したりしている内に、段々、そんな"いい加減"な生き方も有りなのかも…
…そう少なからず考えるようになった。
…―良く考えてみたら、この段階で既に"恋"をしてたんだ!!って…どうして気が付かなかったのかしら…?
私がこの気持ちに気付いた時には、もう
…遅かったのよ。何もかも。遅過ぎたのよ…
*********
「よぉ!クリス!!」
「…あら、ゴールド!
こんな所で何してるの?」
―その日、私はウツギ博士に用があって、ワカバタウンに来ていたの。そうしたら、研究所の前で突然声をかけられて―…振り向いたらそこにゴールドが居たから、思わずどきっとしたわ!!
「あー、俺?
俺ぁ、ここでダチ公を待ってんだよ」
「…ダチ公??」
「用は、シルバーだよ、シルバー。」
そう、ゴールドが話していた。
…そっか、"ダチ公"って、"友達"の事を言ってたのね…
「…でも、どうして研究所の前で?
…もしかして、研究所に何か用?」
そう問い掛けるとゴールドは、あー…、と唸りながら頭を軽く掻き、そして、
「…シルバーがさ、今日急に電話かけてきたと思ったら、「これからウツギ博士の所へ行く」とか言うモンだから、ひょっとしたら盗んだポケモン返しに行くのかと思ってよぉ、
…だから、俺がついて来たって訳!!」
その時のゴールドは、少し得意げに笑っているようにも見えた。
「…あれ、じゃあゴールドは研究所の外までついてきただけで…結局シルバーは、一人で研究所へ…?」
私が呟くと、ゴールドはそれを遮るように
「いやぁー、勿論、最初は俺も着いてくっつったんだけどよぉ、何か一人で行くってきかなくてさ」
―嗚呼、彼は、本当にシルバーの事を"友達"と思って―…いいえ、寧ろ"それ以上"と見ているのでしょうね…?
ゴールドには例えそうだと分かっていないとしても、私には分かる。
…いつだって私は、"友達"としか見ていないんだもの
…何といっても、シルバーの事は、"ダチ公"なんて親しみを込めて呼んでいて、私はただの"マジメ学級委員"なんだから…
―それだけじゃないわ。最近、ゴールドの態度も変わり始めているもの。
ゴールドは私といるよりも、シルバーといる方が楽しいのかしら…シルバーにべったりだし。
シルバーの話が中心だし。(シルバーの話が8なら、私の話は2くらい…かな?)
私は、シルバーを待っているゴールドの近くに座り込んだ。すると、
「…それにしてもさ、」
さっきまで遠くを見ていたゴールドがいきなり私の顔を向いて話を始めた。
「…変わったよな、シルバーの奴」
別に私の話ではないのだけれど、思わず私はゴールドから顔を逸らしてしまった。
それでも彼は、遠慮なしに話を続けた。
「…俺もさ、正直、
ビックリだぜ。
昔はよ、泥棒するたぁ随分とフザケた野郎だと思ったけど、良く考えてみりゃあ、アイツにはあーゆー方法しかなかったんだなぁーって、改めて考えたんだ」
確かに、犯罪にゃ違いねぇけど、シルバーは悪い奴じゃねぇ。それだけはハッキリと言える。
…それ以上は何も言わなかった。
だってそれは、私もそう感じていたから。本当は、誰よりも純粋な考えがあるって、分かっていたから。
…だからこそ、認めたくなかったの。
「…そっか…」
ようやく開いた唇から零れたのは、こんな言葉だけだった。
「…そう、だよね…」
…少し、悔しかった。
「…アレ…おかしいな…急に…目の前が霞んで…ッ」
…あれもこれも全部、貴方達のせいよ!
二人してそんなに私に優しくなんてするからだわ!
…もし、シルバーだけでも優しくなければ、私はシルバーにいくらでも嫉妬でも邪魔でも何でも出来るのに…
「…あーもう!泣くなよクリスッ!
…あ、ほら!今度暇な時にでもお前の好きな所に連れてってやるからさ!な?」
…ねぇ、ゴールド。
私が我儘を言ったなら、貴方は少しでも私を見てくれたのかな…?
…でも、もう良いの。どうせ私は、シルバーの代わりにすらなれないのだから―…
―END―
貴方が幸せなら、もうそれでも良いの…