ぽけ&すぺ
□rival×rival
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「…何だ…クリスか…」
彼は、私が入って来るなり"残念"とでも言いたそうに言ってきた。
「…悪かったわね、貴方が"ベタ惚れ"のゴールドじゃなくて」
私は、嫌味他らしくそう言い、少し乱暴に扉を閉める。
因みにここは病院の個室の病室。彼はこの病院に運ばれた"友達"のシルバー。
―ほんの二、三時間前、シルバーが事故に遭ったってゴールドから聞いて。
直ぐに私は、シルバーの消息に一番通じているブルーさんに電話で聞いて、この病院に行けば居るって教えてくれたから、わざわざ足を運んだって訳。
「…それで、どうなの?怪我の具合は」
私は病室の奥へ向かい、机の上に既に置かれていた果物の入ったバスケットの隣に、持って来た花束を置き、近くに用意された椅子に座った。
「…右腕と顔を少し、怪我してしまったらしい…」
毛布からはみ出た右腕には、確かに包帯が巻かれていて、欝すらと血が滲んでしまっているのが見て分かる。
それから顔を見ると、両頬までも痛々しいガーゼが貼付けられていた。
…痛いでしょうに。でも彼は、"痛い"とも言わないし、痛がる素振りも見せたりしない。
シルバーは、苦笑しながら私にこう言った。
「…意外、か…?」
「…いいえ」
「…格好悪いか…?」
「…いいえ…」
…そう言えば、私がブルーさんにこの病院の事を聞いた時、ブルーさんは言ってたわ…
『…それと、今から話す事…シルバーには言わないであげて欲しいの。
…あの子、自分が普段些細な事で怪我なんかした事がないから…もしそんな姿を恋人に見せたら、どんな反応されるのか…って、凄く気にしていたから…』
…あの時は、思わず二つ返事をしてしまったけれど…話を聞いて、私は、
(…シルバーって…案外心配性なのね…)
…理由は分かってる。人と関わる事を今までしていなかったから、まだ付き合い方が良く分かっていない。…まぁ、仕方ない事よね。
…そう思った。
「…そんな事はないわ…」
私は、机に置いてあった果物の中から林檎を一つ取り出し、側に用意されていた小皿とナイフを使って皮を剥きながらそう答えた。
すると、先程まで窓辺を見ていたシルバーがゆっくりと私の方を向いた。
私は構わず、皮を剥きながら話を続ける。
「…正直な話、この病院の事を聞いた時…聞いたんだけど…"羨ましい"って思ったわ…
だって…貴方は知らないでしょうけど…ゴールド、私より先にこの病院の情報を手に入れて、さっきまでこの病室にいたって…」
「…え?」
「…勿論、貴方は知らない筈よ…
だって…一度この病室に入った後、ゴールドがいて…"シルバーの意識が戻らない"って言って…お見舞いの品だけ置いて帰ったんですって…」
「…え…え…?」
シルバーは、"?"を浮かべながら私を見て訴えていたけれど、私は何も答えずに立ち上がり、シルバーの前のテーブルに剥いた林檎の皿を置いた。
「ごめんなさい。不謹慎な話をして…
…それと…その果物、ゴールドが持って来たそうよ…ちょっとでも残したりしたら、承知しないわよ?」
私は、シルバーが林檎を一欠けら食べたのを確認し、笑顔を浮かべた後、病室の扉に手を掛けた。
「…早く治しなさいよ。貴方は私の大切な"ライバル"なんだから…
…それじゃあ、私、オーキド博士に呼ばれているから、もう帰るわ…お大事に」
「…ああ、言われなくても分かってる…
…ありがとう…」
私は、再び笑顔を見せ、病室を出た。
―END―
「…もしもし?ゴールド?…うん、シルバーなら、もう意識が戻ってるわよ。
……………………………………ヨカッタワネ。」