ぽけ&すぺ

□別に良いじゃない、『夢の中』なら。
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(※流血表現)


―嗚呼、俺は妙な夢を見ているのか。

この夢というのが、これまた背筋を凍らせるような嫌な夢だったりする訳だ。




―ざっと振り返えればこうだ。




まず、何も無い空間に俺、グリーンがいる。

そこに突然、何処からやってきたのかレッドが現れて俺と何かを話しているのたが…

…勿論奴の話し声はおろか、俺の声すら聞こえてはいないのだから、要するに何を話しているのかは不明。

…とにかくだ、それとなく互いに口が動いていて、手振り身振りがあったから、…そういう事にしておけば良い。



…話を戻すぞ。

次には、またも何処からともなく誰かが現れるのだが―…
今回は、あの女―ブルーが姿を現す。何をするのかと思えば、いきなり不躾に刃物らしき物を振り回してきた。

―良く見るとそれは、普段あまり見る機会のない、折り畳み式のサバイバルナイフのようだ。

…成程
、これなら折り畳んでしまえば、鞄だろうがポケットだろうが…手で刃物を持つより相手を油断させる事が可能だろう。

俺とレッドはすんでの所で交すも、余程、おかしな避け方をしたようだ。右足を派手に挫いたらしい。

「これは夢の中だ」という事にとっくに気付いている。しかし、夢の中の俺は、刃物を俺へと振りかぶろうとするブルーを見て、不様に冷や汗を垂らしている。


「…残念ね、
アンタなら…もう少し楽しめると思ってたけど…見込み違いだったかしら…?」



…でも、別に良いわ。
アンタの他にも…楽しませてくれそうなヒトは居るのよ?



…そう、訳の分からん事を言い出した途端、ブルーは狂ったように笑い出し、迷いなくその刃物を振りかざす。


…あの女、なんて奴だ…ッ!!


そう心の中でブルーを恨みつつも、実際には身体が勝手に避けられないと判断し、抵抗もせずに静かに目を瞑る。


―ザクッ…


…如何にもらしい、鈍い音を耳で感じ、「ああ、やられたな」と大人しくされるがままでいた自身を嘲笑する。

もう後は、襲い来る激しい激痛との戦い―…な訳だが、どういう了見か待て
ど暮らせど痛みらしい痛みは何もない。
代わりに、何かから何かが吹き出すような音と、カラン、と金属を投げ出すような音の二つが聞こえてきた。…流石に不審に思った俺は、まさかの事も想定し、なるべく、それもゆっくりと、目を開けてみる。



「…別に『夢の中』なら、刺されたって良いじゃない、グリーン。
…どうせ、アンタの夢の中の話なんだから…」



そう言い残し、ブルーは何処かに消えてしまった。

その後、俺はレッドの事を思い出し、混沌とする意識でレッドを探り出す。



―何と奴は、俺の足元で疼まっていた。



「…こりゃ…ひどい怪我…だな…」



今まで苦しそうに咳込んでいたレッドが、そう呟く。
確かにそうだな。

…いくら急所を外れているといえど、これだけ大量の血液が体外に排出されたとあれば、まず「大量出血」という事で、死に至るだろう。


俺は、取り敢えず、これ以上出血しないように出来れば…何とかなるかも知れないと、あらぬ根拠に突き動かされ、いつの間にか側に都合良く落ちていた包帯を拾い上げ、奴の下腹部を中心に巻いていく。
決して…丁寧とは言えないが…要は正しく巻けていれば良いんだ。
仕方ないだろう?こっちだって気が動転しているんだ、冷静でもないのにどうして綺麗に包帯が巻けると言うんだ。

俺が必死になって包帯を巻いてやったにも関わらず、奴は柄にもなく苦笑いを浮かべ「良かったよ…グリーンが、無事なら…さ…」なんて気弱な発言をかます。

「煩い、余計な口は利くな」と俺は怒鳴り立てるも、それも奴には何の意味も成さずレッドは弱気な言葉ばかりを口にする。
全く、主人公が聞いて呆れるな。



「…グリーン、」



急に、奴が弱音以外の言葉を発したのを確かに聞いた。



「何だよ…いきなり…」



それがやけに嬉しく思えたのかも知れない。
俺の言葉から憤りがまるっきりなくなったみたいだ。

…何と、弱々しい口調だろう。



「…後ろ…気をつけて…」




*********





…気が付けば、俺は夢から解放されたらしい。



「…終わった…のか…??」



辺りを見回すが、あの女も血塗れのレッドもいない。大丈夫そうだな…



「…それにしても…」



…さっきの夢の「後ろに気をつけろ」って…何の事を言おうとしていたんだ…??

…気にはなるが、所詮、過ぎた夢の出来事だ。どうせ現実には役に立たない話さ。



「…もしかしたら、こういう事…かもよ?」



その声が、あの女の声だと気付いた時には、遅すぎた。何もかもが。

俺は堪らず、その場に疼くまる。




…レッドがしていたように…




「…だから言ったでしょ?『別に『夢の中』なら、刺されたって良いじゃない』って…
…こうして現実で刺されたら、本当に死んじゃうかも知れないのよ…?」



…何て、聞こえたような…聞こえなかったような―…




―END―


『…やっぱり、アンタは最っ高に面白いわ!
…さてと、次は誰に楽しませて貰おうかしら…??』


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