ぽけ&すぺ
□ねつふり
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―身体が怠い。
ピピピッと鳴る電子音を聞き、俺は気怠い右腕をやっとの思いで動かし、脇に挟んでいた体温計を取り出した。
体温計の液晶部分を見ると、37度5分と表示されていた。
「…熱…だな…」
…どうやら、それほど高い熱ではないが、今日は本当に何もしたくない気分だ。
…とりあえず、少し眠っておくか…
―そう思った矢先。
「シールーちゃーん!!」
…このくそ怠い時に、アイツはやって来た。
―正直、今は誰とも話す気分ではないし、増してや、体調が優れない時にアイツのような煩いのがいると、良くなるものも良くならない。
(…仕方ない、ここは居留守でも使うか…)
布団を頭まで被り、出来るだけ相手にしないようにしていた。
…しかし奴は、そんな俺の気持ちも知らず、何処かで勝手に作ってきた合鍵を使って中に入ってきた。
…チッ、勝手に俺の家に入るなよ…
あまりの怠さに、些細な事でいちいち虫酸が走る。
それが原因で益々頭痛が酷くなっているのは明白だ。
段々と近付いてくる足音に嫌気がさす。
…しかし案の定奴は、俺の部屋まで辿りつき、いつもの調子で騒がしくやってくる。
「おーい!シルバーッ!!遊びにきたぜっ!!」
…頭が痛いせいで、ゴールドの声が無駄に頭に響く。
…全く、頭痛が酷くなったじゃないか。一体どうしてくれる?
…そう考えるとキリがなくなる上に、益々頭痛が悪化する。…もういっそ、考える事すら止めようか。
「…あり?まだ寝てんのか?」
いつまでも布団から俺が出て来ない異変に気付いたゴールド。
…さぁ、どうする?
(…言っておくが、俺は玄関を開けに行く気はないからな…)
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