ぽけ&すぺ

□嗚呼暑い、あつい。
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(※ただの夏に因んだ鬱ネタ。)



―今日は、梅雨明けの宣言からまだ日が浅いというのに、もの凄く暑い。

…いや、マジでメチャクチャ暑い。

流石にこんなクソ暑い中、自宅の庭でポケモン達と遊ぶなんて考えは微塵たりとも浮かびやしない。


だが、そこで水浴びだってんなら、俺もポケモン達も涼しくなるし、それだったら庭に出るのも悪かねェかも…な。


…あ、でも散水用のホースを物置から探して持ってくるのは、めんどい…



「…あァもうッ、

暑いッてんだよーッ!!!」



…とりあえず、暑くて無駄に落ち着かないから、意味もなく自室内をウロウロしたり、ベッドに何度も飛び込んだり、

しまいには、暑くて開けっ放しの窓から顔を出して、今のような事を馬鹿でかい声で叫んでみたり。


…そんな、暑さでやり場のないイライラが収まらぬ俺を尻目に、いつも通り俺の部屋の隅に座って優雅に本を読んでるシルバーの冷たい一言。



「…おい、

…馬鹿みたいに大声で当たり散らすの…止めろ」



しかも、良く見てみるとシルバーは相変わらずの服装なのに、汗一つかいちゃいない。


…俺なんて、流石に暑くてお気に入りの赤いパーカー脱いじまったっつーの!


更に心なしか、本を読み耽るシルバーの表情は妙に涼しげ―…に、見えてんのは俺だけ…なんかな?


まぁ、それは今はどーでもいいや。


…それよか、先程のシルバーの発言の一つ一つ。

今の暑さで蝕まれた俺の頭には、いちいちカチンときちまうから、タチが悪ィ。



「…―ってオイ!!
誰がバカだって!?誰が!?」



…いや、ぶっちゃけ『馬鹿』という単語には、普段、生活している中でも無駄に反応するのが俺、ゴールド。

そんなワケで、ただでさえ暑くてイライラするモンだから、喋り方もつい、
普段通りの冗談混じりなものよか、ケンカ口調になっちまうんだよな…これが。


―それに加えて、今の俺の口調は、我ながらちこーっとばかし、強すぎたかな…?

と、今更ながらに、若干だけど後悔。


…だが勿論、ケンカっ早いのは俺だけじゃない。

目の前にいるコイツ―…シルバーも、同じく自身に対するプライドが高ェ。

だから、俺がちこっとでも突っ掛かる発言をすりゃあ、奴もそれに大概、乗ってくる。

―なので当然、今の俺の言いように、シルバーはすぐさま食らいつく。



「…フッ、『馬鹿』に『馬鹿』と言って何が悪い?

…それより、さっきも言ったが大声で叫ぶのはもう止めろ。

…見てるだけで、十分に暑苦しい」



…まぁ、叫ぶのが暑苦しく見えるっつーのは、ごもっともな意見ですけどさァ!


頭じゃあ、言葉の意味は理解できても、行動のイライラの制御は利かないので、やっぱり俺は言い返しちまう。



「だーかーらーッ!!
俺のどこがバカだってんだよ!!

…てか、叫ぶのも仕方ねーだろ!?
こちとらお前とは違って暑がりだから、

なんか気ィ紛れる事しねェとやってらんねーんだよッ!!」



―今度こそ、本格的なケンカ腰の口調と言葉が出ちまった。


…あとはもう、いつもの『アレ』しかねーな…




*********




―ダン、ダン、ダンッ!!


ゴールドの家の一階から二階に上がる為の階段に、やたらと力強い足音が響くも、大声で言い合う彼らの耳が、
そんな雑音を拾っている筈もない。



「…―もうッ!!いい加減にしろッ!!

お前はいっつもいっつも、大きな声ばかり出しやがって…ッ!!

そんなに大きな声で話さなくても、俺にはちゃんと聞こえているんだッ!!」



「…んだよ!!オメーこそ、こーゆー時ばっかし声デカくなりやがってさぁ!!

おまけにクリスの奴も、怒るときゃ声デケーし!!

まったく、俺の耳がもたねーったらないぜッ!!」



―…バンッ、



二人が言い合う最中、突然、部屋の扉が乱暴に開かれたと思えば、二人より遥かに大きな声で何かを訴える誰か。



「…ッうるっさーーーーーーーーいッ!!!」



その声に驚かされ、二人は慌てて扉の方を見ると、
そこには走って来たからか、或は感情が高ぶっているからか、
頬が欝すらと真っ赤にして荒い呼吸をするクリスが立っていた。


―二人が言い争うのを中断したのを良いことに、クリスはその勢いのままズカズカと部屋の中へと押し入っていき、二人の目の前までやって来ると、案の定…



「…―全く!!あなたたち!!

暑いのは、私にもよーっく分かってるけど、窓が開いてるのに大声で叫んだり、怒鳴ったりしないで頂戴!!

隣はウツギ博士の研究所なんだし…もうちょっと近所に配慮してくれないと、
みんな迷惑してるんだからッ!!!」



二人の前で仁王立ちするクリスを宥める術は―…

生憎、彼らが反省の色を見せるより他ない。



「「…ハイ、スミマセンでした、クリスさん…」」



クリスからのお説教により、すっかり肩身が狭くなってしまったゴールドとシルバーは、恐る恐る謝罪の言葉を口にする。

…しかし、内心は―…



((…全く、コイツといると、ロクな事がない…))



-END-
 

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