ぽけ&すぺ
□その『邪』な考え一つで、誰かが消えている。
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(※死ネタ注意。)
―一昨日の話。
詳しい事は良く分からなかったが、ポケギアを通してグリーン先パイに呼び出されたから、
珍しく約束の時間内に、
待ち合わせ場所のトキワシティのジムに行ってみたら、すでに他の先客がいてさ。
何だかその先客とグリーン先パイがやけに親しそうに話し込んでるようだから、俺はてっきりレッド先パイでも来てるのかと思って、特に深く考えずにグリーン先パイの見える所まで近づいたら、
…何と先客は事もあろうにレッド先パイではなくシルバーちゃんだった訳で。
―え、えっ??
その光景をマトモに直視してしまった俺はと言うと、
頭の中が一瞬にして『疑問符』と言い知れぬ感情がフツフツと沸き上がってくるもんだから…一体、どうしたもんかな。
…まぁ、とは言っても本当にただ会話に夢中になってるだけに見えるし、
別にコレと言って疑わしい行為が交わされた形跡もなさそうだし…
―その言葉を頭に叩き込んで、何度も復唱して、
必死こいて平常心を保とうと馬鹿みたいに一人深呼吸して足掻く俺は、
つい反射的に、開いたばかりのジムの扉を閉めてしまう。
―それから俺は、その場の流れで直ぐにカントーから離れ、まるでヘタレの如く、ジョウトにある自宅に飛んで帰った。
―しかし、翌日。
ほんの数分前、グリーン先パイが交通事故に遭ったとクリスから電話越しに聞いた。
―その時俺は、
グリーン先パイが事故に遭ったという話に対して、
『可哀相』の他に、ほんの少しばかりほくそ笑むちっぽけな自分に、気付かされてしまった…
*********
―昨日の話。
昨日は前の一件があり、久しぶりにグリーン先パイ以外の先パイ方に会った。
―中でもレッド先パイとブルー先パイは、ひっそりと泣いていたシルバーの背中に、
気を回して、そっと手を添えて優しくさすっているのが見えた。
…うーん、まぁ、
一応、俺としちゃあ…ブルー先パイとシルバーは姉弟みたいなモンだから、
あの人がシルバーを何かと気遣うのに関しては、別に大して気にならないが…
…やはり、問題はレッド先パイの方だな。うん。
…ってアレ?
確か…レッド先パイって、グリーン先パイ一筋の筈じゃあなかったんスか…ッ!?
―ああぁあ、駄目だ。
またイヤな感情が芽生えてきた…
―とりあえず、これ以上余計な物を目撃する前に、さっさとその場を後にした。
―更に翌日。
今度は午前中にレッド先パイがビルの屋上から転落し、
その数時間後にはブルー先パイが階段の一番上の段から足を踏み外して転落したとの情報が入った。
―勿論、二人の葬儀も、グリーン先パイと同様に行われた。
*********
―そして、今日の話。
特に行く宛もなく、その辺を散歩してた時、
道端で偶然シルバーらしき人物の後ろ姿を見つけ、
俯いたまま微動だにせず、何だか様子が変な気がしたので、思い切って話し掛けてみる事にした。
「なー、シルバー。
んな所につっ立って…何やってんだ?」
そう言いながら、ごく自然に背後から腕を回すと、
いきなりシルバーがビクッと肩を震わせたかと思えば、
恐る恐る振り向き様に俺を見る表情が、どう考えても普通じゃなかった。
―あり?
…ひょっとして、俺…シルバーに避けられてる…のか?
…おかしいなぁ、俺、シルバーを怒らせるような事しちまったかなぁ…でも、いくら考えても心当たりすら浮かばない。
「………………」
俺が何かを考える仕草をしている間もずっと無言のままだし、
視線が合った途端に、慌てて目を逸らすベタな反応してくるシルバーに、
段々と俺は苛立ち始める。
「…なぁ、シルバー。
人がせっかく話し掛けてんのに…ダンマリすんのって、
…いくら何でもヒドくない?俺、マジで泣きそうなんだけど…」
そう言うが早いか、俺は少々乱暴にシルバーの右手を掴んで握ってみる。
すると、どうやらシルバーは何かを持ってたらしく、俺が強引に腕を引いたことによりそれを落としてしまったらしい。
「………あっ、」
―瞬間、シルバーはばつが悪そうに言葉を漏らし、それを俺には見えぬように回収しようとしていたので、
シルバーには悪いと思いつつも、物見たさに負けて俺は横からひょいと掻っ攫ってしまう。
「…な、何だ…こりゃあ…??」
…一瞬、何が目の前にあるのか、良く分からなくなった。
それから直ぐに言いようのない気持ち悪さから、
直感的に『これ以上は見るな』と警告された気がしてぶっきらぼうにシルバーに突き返した。
…何だ、
…何だ…
…何なんだ…??
―因みにそれは、たった数枚の写真だった。
そして、それに写っていたのは…
―歩道からグリーン先パイを車道に押し出すゴールド。
―ビルの屋上でレッド先パイを突き落とすゴールド。
―階段の踊り場から、ブルー先パイを押すゴールド。
(…嗚呼、先パイ達を殺したのは―…)
-END-
その答えを聞く前に、シルバーが振りかぶったナイフがゴールドに突き刺さる。
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