ぽけ&すぺ

□放たれた『邪』な考えを、隠蔽したがる『邪』。
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(※『その『邪』な考え一つで、誰かが消えている。』の続き…くらいの設定…)


「…やっぱり、
アイツ(ゴールド)は壊れたのか…」


―不意に背後から聞こえてきた声に、シルバーは小さく頷き振り返りもせずに言葉だけを向けた。


「…壊れました」


わざわざ顔を見なくても、シルバーの声色で彼がどんな心境でいるのかなんて、容易に想像がつく。


「…やっぱり、
そうなっちゃったか…」


背後にいた人物は、ゆっくりと移動してきて、シルバーの足元に散乱した三枚の写真を一枚一枚、丁寧に拾い上げながら実に感慨深そうな口ぶりでそう呟いた。

…良く見てみると、シルバーに話し掛けていたのは、どうやらレッドのようだ。


「それにしても、
まさか…こうもあっさりとバレるとは流石に考えてなかった…っていうか、うん。」


レッドが全ての写真を拾い、一纏めにしてからシルバーの方をちらりと見ながら苦笑すると、段々とシルバーの表情が一層暗くなる。


「…すみません、
俺が、写真をうっかり落としてしまったばっかりに…」


しまった…!!と、レッドは慌てて弁解じみた言葉を述べる。


「あ…いやいや!!
別にシルバーが悪い訳じゃないし!!

そ…それに、ホラ!例え今日はこれで見つからなかったにしても、もしかしたら明日には…別のルートでバレてたかも知れないしッ…!!」


レッドとしても、
シルバーを攻め立てるつもりは微塵もなかったのだが、どうにも口を付いて出た言葉は、やけに皮肉混じりに聞こえてしまう。

良い弁解の言葉が見当たらず、あわあわするレッドを尻目に、シルバーは微かに苦笑いを浮かべた。


「…大丈夫ですよ、
そこまでして無理に俺に気を遣ってもらわなくても、

…レッド先輩の言おうとしている事は、何となく分かっているつもりです」


唐突にすい、っとレッドの目前に手を差し出す。
いきなりの行動に最初は目をぱちくりするが、直ぐにレッドもシルバーの意図に気付き、自分が持っていた写真を手渡した。

受け取った写真を、シルバーはそのままポケットの中へと仕舞う。


「…俺の方こそ、
突然、この写真の処分の手伝いを頼んだりして…申し訳ないです。

…折角来てもらっておいて、
こんな事言うのも何ですが…結局、写真は奴に見られたので、もう処分する必要はないかも知れないけれど…」


そう、残念そうに語るシルバーの視線の先には、如何にもそこら辺からかき集めてきたような古い新聞や雑誌やら、小枝やらが一箇所に固めて置かれていたのが目に入り、
ああ成程、これで火を起こして写真ごと焼き払うつもりだったかとレッドが一人で自己完結した。


「…じゃあそういう事なら、
コレはもう必要ないな!」


にっこりと笑い、懐から取り出したマッチ箱を左右に振り、シルバーがこくんと頷くのを確認して、また懐に仕舞う。


「…あれ、
そういえば、肝心のゴールドは…何処に行ったんだ?」


―写真を見られたって事は、間違いなく此処には来ただろ?
とレッドが辺りを見回すが、
それらしき人物所か自分達以外、誰一人として近くにいる気配すら感じられない。
その言葉で何かを思い出したのかシルバーが、ああ、と声を出す。


「…ゴールドなら、さっき俺が…コレを使って気絶させた後、リングマに頼んで奴の家まで運ばせました。

…恐らく今頃、自宅の部屋のベッドで横になってると思いますよ」


―コレ、といってシルバーが取り出したのは、一見すると本物の鋭いナイフに見えるが、
本当に良く見てみれば、本物よりも無駄にテカテカしているので、正に100均なんかで売ってる、プラスチック製のおもちゃだと分かった。


「…ハハハ、これまた随分とベタな物を使ったようで…」


シルバーのやった行為にとやかく口を挟むつもりではないけれど、
何もわざわざそれを使う必要があったのか…?
いや、でもまぁ…シルバーらしいっちゃらしいよなぁ…
なんて、半ば呆れを隠せない表情で言った。


「ひとまずこの件に関して…俺は隠し通せるだけ、隠し通すつもりです」


「…まぁ、俺的にもシルバーの言う通り、なんとか胡麻化せる内は、ゴールドにとっても俺達にとっても、
その方が良いんじゃないか?」


そう言い残し、レッドがくるりと踵を反して最初来た方向に向かって歩き始めた。


「じゃあ、俺は俺で調べてみて何か情報が掴めたら、
また連絡するよ」


左右に手を振るレッドに合わせて、
シルバーも小さく頭を下げていた。


「…はい。
また何かあったら…よろしくお願いします」


―その場に一人残されたシルバーは、
まるで悔しさを表現しているように、
右手をポケットに突っ込み、その勢いで中の写真をぐしゃりと握り締めた。


-END-


(果たして、俺はいつまで…ゴールドの目を欺けていられるだろうか…?)



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