ぽけ&すぺ

□急降下パラメーター
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(※エイプリルフール&切ないネタ。)


本日最初の、記念すべき嘘は何だったかな…?

…嗚呼そうだ、確かせっかくのエイプリルフールだからってんであの『堅物マジメ委員長』ことクリスを俺様の華麗なるジョークで、
ちこーっとばかりからかってやろうか、とかいう発想から生まれた嘘だ。

勿論、クリスを見掛けた俺は直ぐさま何の気なしに「好きだぜ!」と笑顔で叫んだら…あろう事かクリスはその言葉が嘘であると直ぐに見抜いておきながら…「あらそう、実は私もなの!」と返してきやがった!!

何てこった!
俺はてっきり「また下らない嘘なんか付いて…!」とか言われて、いつもみたく説教地味た言葉を延々と浴びせられると思っていたのに…!!

あり?
…そういえばクリスの奴、前にこうやって俺の毎回下らない嘘を付いた時は…見事に引っかかってくれちゃったもんだから、
それが可笑しくて俺はつい馬鹿みたいに笑ってしまったら…余程悔しかったようで、クリスは怒る所か逆にうんと悲しそうな顔をして半べそをかいていたっけ…

…て事はもしかして、
コイツは俺の吐いた嘘を逆手に取って、あわよくば俺の足元を掬って仕返しするつもりなのか…?!

だとしたらマズい、
もし本当にクリスにその気があったら…きっと、俗に言う『何倍返し』とかで俺が昔付いた嘘以上に俺を貶めてくるに違いない。

…そう思っている内に、
負けず嫌いな俺達は嘘を嘘でどんどん塗り固める事態に発展させ、終いには、互いに付き合おうとかいう次元にまで飛躍してしまった…

いやちょっと待て…ヤベぇぞこりゃあ…!!

いくら『相手より先に根を上げまい』という気持ちが勝ってしまった結果とはいえ、
これじゃあ相手を嵌める以前に自分の首が締まる一方じゃねーか!

内心、俺が焦り始めたのを知ってか知らずか、俺達の側を偶然通りかかったシルバーに手を振るクリス。

「あ、シルバーじゃない!」

彼女が呑気に笑顔で手を振ったが為に、
案の定何も知らないシルバーは、こちらの存在に気付くや否や真っ先に向かってきた。

「クリス!…それに、ゴールドも一緒か…」

…心なしか、
俺もいると分かった矢先にいきなり冷めたような口調に変わるシルバー。
多分、この状態のせいで不機嫌なのだろう。

…さて、
何て弁解したもんかな…?

流石に良い年しておいて、クリスに付いた嘘をありのままに話す勇気などは持ち合わせていない。

「…それで、
今日は二人で出掛ける予定でもあるのか?」


暫くクリスと共に黙りこくっていれば…やはりシルバーは俺達の事に触れ込んできた。

…気まずい。大分気まずいぜ?こりゃあ…

すると俺の代わりにクリスが何か思い付いたらしく「実はね…」と口を開いた。

「私たち…今日から付き合う事になったの!」

「…はァッ!?」

「…!?」

クリスのとんでもない発言に、思わず一番ビックリしたであろうシルバーより凄い反応をしてしまった。

…てゆーか、オメーこの後に及んでまだ嘘を突き通すつもりだよ!?

流石にシルバーだけは、
俺の下らない嘘に巻き込みたくなかったのにな…

「…それ、本当なのか…?」

当然ながら、既に俺と関係を持っていたシルバーが疑いの眼差しを向けて聞き返してきた。

…ただ、もしここで嘘だと明かしてしまえば、それと同時に『クリスより先に根を上げた』という事にも繋がってしまう。

そうなると、折角今まで塗り固めた物が、一瞬で全てが水の泡となる。

「じっ…実は、
そうなんだよなぁ〜!」

…何てこった。
気がつけば自分も嘘を上積みしているではないか。

苦し紛れに苦笑する俺の姿は、シルバーの瞳にはさぞ哀れに見えただろう。

…シルバーの目つきがヤバい。後できちんと説明しないと、間違いなく殺される。

「…だから、
その…えーと…」

「………………」

…もう、今から何をほざこうがそれは全て言い訳がましくなるばかりだ。

暫く無言でいたシルバーが、何故か急に開き直ったように普通の表情に戻ったかと思いきや、
その口からは想像が付かないくらい衝撃的な言葉が飛び出した。

「…それは良かったな。
因みに、俺も丁度さっき、姉さんと付き合おうという話をしていた所だ。」

「はっ!?」

「えぇっ!?」

…意外な事に、クリスも俺に負けないくらいに頓狂な声を上げた。

「…え?ちょっと…ねぇ、それ…本気で言ってるの…??」

…何だか、気のせいなのかクリスが俺以上に必死になっているようだ…。

シルバーは何食わぬ顔で「ああ…」と答える。

「で…でも、どうして?
あなたたち…今まで付き合ってきて特に問題なんてなかったじゃない!」

「そ…それは…」

「それがどうして、
こんな事になっちゃったの…?」

「…………」

あまりにもクリスが必死過ぎる為、俺はただ黙ってその様子を指加えて眺めているしかなかった…

すると今度はクリスが、顔を真っ青にして何やらぼそりと呟く。

「…ごめんなさい、きっと私のせいだわ…」

「…?」


「…私が、
ゴールドの嘘に便乗して…まさか、関係までこじらせちゃうなんて…」

…案の定クリスは、ハナから俺の嘘を利用するのが目的だったみてーだが、今はそんな事どうでも良い。

確かにクリスも十分に悪いが、とは言え俺も…悪ノリし過ぎだな。

本当に申し訳なく思っているからか、彼女の目尻には鬱すらと水滴が見える。
それを見たシルバーも、途端に目を丸くして慌てふためく。

「えっ…いや、あの…
その…す、すまないクリス…実は、今の俺の言葉も…全部、嘘なんだ…」

「………………えっ?」

深刻な顔のクリスが一変。
今は何とも言えな
い表情を浮かべてきょとんとしている。

「…いや、実は俺も、
さっきのクリスの言葉が嘘だと分かったから…それに便乗しようとしたら、
こんな事に…」

…何て奴らだ。結局はコイツも嘘を嘘で打ち返してきただけだったのかよ!

それを聞くや、クリスは安堵の溜息と共にその場に座り込んだ。

「な…なあーんだ、
じ…ジョークだったのね…」

へなへなと気を緩ませるクリス、そりゃビックリもするわな。



ーそして結論!
行き過ぎた嘘は、
人に多大なるダメージ(精神的に)を与えるから、程々にしようぜ!!
by:ゴールド



 

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