ぽけ&すぺ

□殴って、蹴って…
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(※大分歪みネタ&流血表現注意!!)


―がつん、と茶髪の少年が力無く壁に頭を強打してその場に倒れ込んだ。

どうやらまだ意識はあるらしいが、良く良く見てみるとその少年の頬や口元からは血のような赤い液体が下に向かって伸びる。

「…う、…ぐっ…!」

如何にも苦しそうに呻き声を上げる少年―ブラックに更に追い討ちをかけるかの如く、彼の胸倉を乱暴に掴み力任せにぐいっと持ち上げる青年。そんなNが彼を見る目はまるで、詰まらない『玩具(おもちゃ)』を見るように冷たい。

今でこそ、がっくりとうなだれるブラックだがつい先程まではNに殴りつけられれば「…ってぇなッ!」と叫びながら倍返しだ!とばかりに負けじとNの頬をグーで殴りつけた。

勿論、その後ではまたブラックの方が殴られて、Nが仕返しされてを繰り返していくうちに、運悪くNの拳がブラックの急所を掠めたらしく「ぐ、は…っ!」という声と共に唾液やら微量の血液やらが混ざった液体が飛び出したかと思えば、それからはもういくらNに殴られようが、しまいには蹴りまで加わわろうが反撃出来ないくらいに弱っていった。

大人しく殴られるだけ殴られて抵抗しなくなったブラックの様子に、Nは思わず嬉しそうに口角を釣り上げる。

「…ねえ、ブラック君。
痛い?そりゃあ…痛いよねぇ?」

一人クツクツと喉の奥から楽しそうに笑い声を上げるNに、ブラックは今にも消え入りそうなか細い声で吐き捨てる。

「…っ!サイテー、だぞ…っ!おまえ…」

確かに。他人を殴ったり蹴ったりする事で私服を肥やすなんて、誰が見たって非人道的な行いだ。

身体は大人しくなったのに、今だ口だけは相変わらず反抗的な態度を取るブラックに『お仕置き』とばかりに、顔面にもう一撃。

「うっ…ぐ、はっ…!!」

いくらまだ意識があるとはいえ、流石にこれ以上殴られでもしたらタダでは済まない事態になる可能性だって否定できない。
ここは一つ、こちらが突破口を見つけるまでは何とか彼の容赦ない攻撃に耐えて機会を窺うより他ないだろう。そう、頭では分かってはいるものの…いざ実際にそれを本気で耐えられるかどうかは、また別の話である。

いい加減、
ぼやけてくる視界と遠のいてゆく意識の中で、Nはまだ狂ったように笑うのを止めようとはしない。

最早、Nの顔でさえまともに認識できているかも怪しい程に虚ろな目をしたブラックに跨がりその耳元で何かを囁く。

「ねえ…ブラック君。」

その言葉とほぼ同時に、Nが彼の両腕に自身の足の膝を置き、ゆっくりとだが着実に体重を掛ける。

「…〜っっ…〜っ!!」

最早、あまりの激痛に言葉にならない声を上げるしか出来ないブラック。

当然だが…これから自分が何をされるかを悟ったブラックは冷や汗を垂らし、全身からさあっと血の気が引いていくのを感じた。

そんなブラックにNはまた、益々嬉しそうに不気味な笑みを浮かべている。

「このままさ…ボクの手でキミの腕をへし折ってしまえば、キミをボクのものに出来るのかな?」

「…っっ〜っ…?…!」

生憎、痛みのあまり声にはならないがブラックは思う。「それは無理だ。何せ人間には足というパーツがある。足さえ無事なら、とりあえずNから逃げる事は可能だろうから」と。

それを知ってか知らずか、唐突にNは「ああ!」と閃いたように頓狂な声を上げた。まさか、今の考えを読まれたのだろうか?

「そうだよね…ヒトは腕が使えなくなったって、それで全ての自由が利かなくなる訳じゃない。そう…足だ。腕と足の両方を潰しておけば、間違いなくキミは、ボク無しでは何一つ出来ない身体になる!」


―嗚呼、これで今度こそ、自分はNの側に死ぬまで置かれる事になるのか…

…でも、それはそれで、もう良いっか…

もう―全てを諦めたように息を吐き、全ての肢体から残っている力を全て抜いた矢先。



―ばきり、といとも簡単に骨が軋むような感覚と共に鈍い嫌な音が馬鹿みたいに部屋中に虚しく響き渡っていた。





 

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