ぽけ&すぺ
□破る記憶に焼き付ける炎
1ページ/1ページ
―夢を見た。
何もなくただ真っ白な空間で一人、ぽつんと佇む自分の手に握られていたのは、一枚の写真と切れ味の良さそうな先端の尖った鋏。
その鋏を右手に取り、左手には写真を持って何をするかと思えば…それを端から小さくチョキ、と鋏を入れる。後は流れに合わせてチョキチョキと切り進めていき、みるみる小さくなる写真。
その切った残骸はまるで桜吹雪のように、ひらひらと足元へ積もっていく。
―チョキ、チョキ。
―ひらひら、ひらり。
気が付けば…いつの間にか、前髪が特徴的な黒髪の少年の写っていた箇所は塵と化し、残るはその隣ではにかむように小さく微笑んでいる赤髪の写真の部分。
「……………」
…ついに、彼の部分まで切り刻むのかと思えばその人物の手は途端にぴたりと止まった。一体、どうしたのだろうか…?
鋏の刃は丁度、赤髪の少年の首元でギラリと鈍い輝きを放っているまま。
否―彼は迷っているのだ。このまま一思いに切ってしまおうか、それとも切らないでおくかを。
「………………」
それからも、彼は幾度となく刃先を向けては途中で踏みとどまり、また動かしてはぴたりと止めるの繰り返し。
「………………っ」
ようやく彼は、その少年の写真だけは切る事が出来ないと判断したようで、その内なる感情をぶつけるが如くに手にしていた鋏を力任せにぶん、と投げつけると少し離れた場所にある壁にとすんと突き刺さった。
「………………」
…仕方がないのでその少年は、先程バラバラに刻んだばかりの自身の写真にだけマッチで火を付けて燃やし、その場で泣き崩れた。
そんな彼の左手に大事そうに握られたもう一人の少年が写った写真は、彼の握力のと大粒の涙のせいで殆どふやけてボロボロになってしまっていた…
*