頂&捧小説

□曖昧。
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―とある日の昼過ぎ。俺は自分の隠れ家で久しぶりに読書に没頭していたら、別に呼んだ訳でもないがゴールドが半ば押しかけるようにやってきた。

急にやって来るものだから、こちらは何の支度もしていなかったのだ。

しかしゴールドは、家に入るなりまるで自分の家のように自分でお茶の用意をして寛ぎ始めた為俺がする事がなくなった。とりあえず、本に意識を戻す事にした。



「シールバーッ!!」



ふいに名前を呼ばれ、俺は読んでいた本の間にしおりを挟み、声がした方を向く。



「おりゃっ!!」



突然の効果音と共に、その声の主は俺の直ぐ後ろにまで迫ってきていたのだろう、後ろに向き直る前にそいつは俺の懐に飛び込むように勢い良く頭から突っ込んできたかと思えば、その流れで俺の身体に抱き着いてきた。



「…ッ!?」



…全く奴ときたら、まだ告白して、付き合い始めてから1〜2週間程度しか経っていないと言うのに、
暇さえあれば抱き着いてくるわ、押し倒されそうになるわ、キスされるわでしかも、ゴールドの辞書に自重という単語は存在しないらしい。

―例えそこが人通りの激しい道路だろうと、或は自分の母親の前でだろうと平気でそれらを要求してくる。
…最初こそ鬱陶しい話だった。

…気がついた時には、俺自身も半ば諦めている―と、言うよりは、気にならなくなってしまった―いや、それもしっくり来ない。



―寧ろ、『それでも良い』と思っている。多分、これが一番正解に近い…筈。


…とは言っても、流石に突然の出来事だった為、少し驚きはしたものの自然と嫌な気分がしなかったので、

…いつもなら殴り倒す所だが、今回は大人しく抱き着かれてやるか…

抵抗する代わりに俺は、出し掛けた手をそのまま引っ込める。


俺が珍しく抵抗しないのを良い事に、ゴールドは不思議そうに疑問を投げ掛ける。
それと同時に抱きしめらる手から解放される。
しかし俺の口からは勝手に「…別に…」という言葉が、自分の意思とは関係なしに零れていた。



「…ふーん?」



…まだ少し腑に落ちないと言わんばかりの返事が返ってくる。
が、直ぐにゴールドの方から「…ま、俺は別に気にしないけどなっ!!」
…そう言って何事もなかった風に再び抱き着いてきた。



「……………」



いつもにも増してベタベタしてくるゴールドを他所に…ふと、今の状況を頭で何度か整理してみる。
…今日の俺はいつもと違う、自分でいうのも微妙だが、確かに奴が不審に思うのも分かる気が―…


…そんな冷静に活動する脳内とは裏腹に、心臓は五月蝿い程に脈打っている。


ふとゴールドに目をやると、俺の視線に気付いたのか満足そうにへへっ、と笑う。

相変わらずの笑顔の筈が、その嬉しそうな表情に心が吸い込まれそうになる。咄嗟に目を逸らす。何とか深呼吸でもして落ち着かせられたらと思った。

だが、心臓は更に追い撃ちを掛ける様に騒ぎ出す。今度は全身が心臓にでもなった気分だ。呼吸する事すら邪魔する。




*********




―あれから二時間経ち、ようやく満足したのか俺から離れ、唐突に「気分転換に外でも行くか!」なんて言われ、別に外で何もする事もないが、黙ってついていく事にした。

一応拒否権はあるのだろうが、なるべくゴールドからの誘いには素直に乗っておきたいと真っ先に考えた俺の思考回路は一体…



「…あら、ハァイ、シルバー!!」



特に宛てもなく外を練り歩いていたら、偶然姉さんと出くわした。

姉さんは嬉しそうにこちらに近いてくるなり、ゴールドの存在に気付いたらしく「はっは〜ん☆」と納得したように手を叩く。



「…あらあら、もしかしてアタシ、お邪魔だったかしら?☆」


「…いえ、そんな事ないっスよブルー先パイ!な?シルバー!」


…何故かゴールドが勝手に話を纏めて、更には俺に話を振ってきたではないか。

…とりあえず、曖昧な返事だけを反しておく事にした。

すると姉さんは、俺の言葉の意図を読み取ったように話を繋げた。



「…そう?
でもせっかくのお言葉で悪いけど、アタシこれから用事があるからもう行くわね☆」



「えー、そうなんスか?」



「…あ、そうそう、一つ言い忘れる所だったわ!」



姉さんを見送ろうと思った矢先、姉さんが急に耳を貸すようにと手振りしてきた。



「…あのね、前から聞こうと思ってたんだけど…
…ずばり!アンタ達は何処まで進んだのかしら?☆」



いきなりの意表をつく質問に、言葉が詰まってしまう。



「…手くらいは―…繋いだ事あるわよね?
抱き着き、キスは日常茶飯事?
…あっ!もしかして…もうアッチまで体験済み?」



「ちょっ…姉さん!?」



姉さんのあまりに飛躍した話題に、咄嗟にこんな言葉しか口に出来なかった。

…ていうか、先ず姉さんは誰を基準にして考えているのだろう…?


俺が答えられずにいると、またもやゴールドが俺の意思を無視して勝手に話しだした。



「んー…、流石に全部体験した訳じゃないんスけど、そのうち一通り体験しようと思いまっす!!」



「何学級目標みたいに纏めようとするんだ変態馬鹿!!」



…とりあえず、今までの分(散々好き勝手やられたからな…)も含めて、力任せに殴りつけてやった。



「うげっ!!」



そいつは情けない声を上げて一旦俺から距離を置いた所に立つ。

姉さんは俺一人で見送り、姉さんの姿が見えなくなった事を確認し、



「…俺は帰る」



…何てぽつりと呟き、一人家に向かって歩き始めると、当然、ゴールドも俺を説得するべく俺の後を追い掛けてくる。




…一瞬でも『コイツになら、何をされても構わない』―


…そう思った俺はきっとビョーキだ。




―END―


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でも途中でいつも通り目的喪失。ヤベェ…

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作業用BGM:からくりピエロ(初音 ミク)
 

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