お兄ちゃん奮闘記(小説)

□奮闘記第二部
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第2話 鮫のお兄さん@






「じゃ、よろしく頼んだ!!」



満面の笑みで笑い、愛車(おんぼろ自転車とも言う)に跨る佐助。片手を上げると間もなく颯爽と走り去ってしまった。

…残されたのは、真っ赤なリュックを背負った幸村とー…



「…Really…?」



煙草を銜え何ともいえない表情で立ち惚ける政宗だった。

こんな状況になったのは何故か、時間をぐるり、昨日まで戻してみよう。







「えっ!鮫の方!?」



意外すぎる答えに、佐助は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。ついでに、政宗の事を巫山戯ず「鮫」と叫んでしまっている。



「…自分で振った話だけど…まさかこっちを選ぶとは…」

「??」

「勇気があるというか流石というか…?」



シャリシャリとかき氷を食べながら小首を捻る。

(あいつもし子供とか預けられたらどうするんだろ…えーまじ絵柄が思い浮かばない!放って遊びに行っちゃうとか?…うわぁあり得る)

自分で提案した事とは言え、まさか実現するとは思っていなかった佐助である。…が、恐いもの見たさと言うのだろうか。佐助は色々と思案する内「不安」が「興味」に変わってしまった。

政宗は子供(五歳児)を託されるとどういう行動に出る?



「よし分かった。ちょっと電話してくるね!!」



何やら決心したらしい佐助は勢いよく立ちあがり、携帯電話を片手に洗面所へと駆け込んだ。電話帳から政宗の文字を引っ張り出し、躊躇いなく電話をかける。

ぷるるる、無機質な音とは反対に、佐助の心は期待で大きく膨らんでいた。期待というか、悪戯をする前の子供のような、わくわくどきどきとしたちょっと曲がった高揚感。



「あ、もしもし?へロー!」

『……Hello?何だよ、いやにtensionが高ぇな』

「えっとね、明日の夕方から政宗んち行っていい?」

『いちいち聞くのか、お前が』

「ついでに泊めて欲しいんだけど、」

『…OK、適当に来いよ』

「ありがとー!じゃあよろしく〜」



言って、通話を切る。佐助はうきうきと幸村のお泊まりセットの準備にとりかかったのだった。

…さて、この会話で政宗が「佐助以外を泊める」という結論に至るだろうか。実際、政宗は当日まで「真実」に気付くことができなかった。ここから時間を進めて、冒頭に戻るとしよう。



「政宗、幸村の事よろしくね!明日のお昼ぐらいに迎えに来るから!」

「What’s!?お前じゃねえのかよ」

「え、だって“俺”とは言わなかったじゃん」



佐助の台詞に、政宗はすっかり騙されたのだと漸く気付いた。あれよあれよという間に佐助は去ってしまい、残された二人はぽかんとその場に立ち尽くしたと言うわけだ。…否、呆れ返って言葉も出なかったのは、政宗だけ。



「…」



心なしかしなびた煙草を銜え、傍らを見下ろせば何やら真剣な表情で前をじっと見据える幸村が。

(………Pardon?………マジかよ…、)

ひくり。ご自慢のハンサム顔も台無し、方眉が分かりやすく崩れる。

これまでに振られたどんな頼み事より、無理難題がそこにはあった。政宗は、子供が一番と言っても過言ではないくらい、大嫌いなのである。





Aにつづく

プチ企画の結果は、政宗でした!^^コメントありがとうございました〜*

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