連載小説(裏)

□女子高生彼女E
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学校も終わって放課後、幸村は車に揺られて優雅な下校…とはいかなかった。



「あ、あの…ど、何処へ行くのでござるか?」



高そうな革張りの座席の中央に座らされ、サイドには強面の男が座っている。窮屈な車内は威圧的な空気で張りつめていた。黒塗りの高級車は伊達家の物でも、武田家の物でない。どうしてこんなことになっているのかと言えば…まあ、簡単な事で。

幸村は下校時、また拉致されてしまったのである。

今日は政宗と一緒に夕飯を食べようと約束していた幸村は、意気揚々、手提げをぶらぶら揺らしながら校門をくぐった。いつもより早く飛び出してしまったためか迎えの車は来ておらず、幸村は隣にある公園で待つことにしたのである。

以前拉致された事件から必ず校門内で待つようにと言われていたのに、幸村はそのことをすっかり忘れてしまっていた。あまり深く考えず校門を出て通りを少し進んで、後もう少しで公園が見える…という所で後から声を掛けられた。

振り返れば強面、尚かつ至極がたいの良い男が二人。幸村は引き摺られるようにして車へと乗せられた。



「あ…あのう…、」



強面の男に挟まれ、幸村は何度目かの疑心暗鬼の声を投げた。乗せられた最初の数十秒はパニックに陥り騒いでいたのだが、強面の男達の威圧的視線と態度にすっかり怖じ気づいてしまった幸村である。幸村がそわそわ、以後心地悪そうに俯いた所で助手席からいやに落ち着いた声が返ってきた。



「突然申し訳もありません、幸村様」

「は、はい…?」

「ご安心下さい。貴女様を迎えに行くよう頼まれたのです」

「…誰に、」

「伊達政宗様のご友人です。ご安心下さい、危害を加える気は全くございません」

「はあ…」



何とか微妙に頷いてはみたものの、ご安心するには難しい状況である。窮屈な車内に、窓から見える見たことのない風景。

(一体どうすれば……政宗殿、)

幸村は以前連れ去られた時の事を思い出して思わず恐怖した。かといって騒いでも逃げられる状況でも無く、幸村は想い人の名前を脳内で念じながらもそのまま運ばれていくしかなかった。






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