★ガッチャマン補完

□その1
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「まず髪を伸ばせ」

「へっ?」
ジュンは振り返った。
一人で…お気に入りの窓辺で外を見ていたはず。
長く白い廊下。考え事にぴったりのお気に入りの場所。

背後にジョーが立っていた。
半分は緩いウェーブの髪がかかっていて表情の読み取りにくい、いつもの顔。
「任務、一段落したのか?」
「う、うん。さっき戻ってきたの」

ジョーは眉を下げてふっ、と笑うとジュンの隣に立ち、腰をかがめて顔を覗き込む。

「健の好みは髪の長い女だ」
はあっ、とジュンがため息をつく。
「スーツを着る時邪魔になるから…」
珍しくジョーが申し訳なさそうな顔をする。

「ああ…、ごめん」
「べっつに!」
ジュンがジョーの胸に軽くパンチを当て、スキップしながら去っていく。
その後ろ姿にジョーの胸が痛む。

5人の中で一番「石」との適合率が高い彼女。
結晶体の影響が強すぎて、精神的な不安定さが常に付きまとうのだという。
不安定をごまかすのに恋心が有効だと気づいたのはジュン自身で、「健が好き」と公言するようになったと南部博士は言っていた。

もしかして…恋が成就したら不安定になると思って健は相手にしないんだろうか。
だとしたら本当に律儀なやつ。

思わず笑みがこぼれた瞬間、もう慣れてしまった痛みに襲われる。

目の奥が痛む。同時に腕にはめこんだ結晶体の光が不安定に揺れ弱くなる。
いつもクリアに光っている青い石が、細く揺らめく。
まぶたを固く閉じて結晶体に意識を集中させる。
きっと今俺の目は赤黒く光っているのだと思うと、叫びたいほどの恐怖にとらわれる。

「う…」
頭を押さえて壁に寄りかかり、そのままずるずると座り込んだ。
早く部屋に戻らなければ。…足音がする。

「ジョージ・アサクラさん」
うっすら片目を開けて見上げると長い髪の白人女性がジョーを見ていた。
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