THANK YロU

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俺、沢田綱吉が

この世界に生まれてから

約14年の月日が経っている。



その間に一体俺は何回『この世界は平等なんかじゃない』って思ったんだろう?

いまだってそうだ。

目の前には双子の兄――沢田吉綱がいる。
しかも告白され中だ。

俺はというと、物陰に隠れて告白の場面を見守り中。


「ずっと、ずっと前から沢田くんのことが好きなんです!」


…俺だって『沢田くん』だ。


「よかったら、その、付き合ってください」


ああ、その台詞が俺に向けられたものだったら。


「…悪い。俺、好きなやついるから」


そんな女の子を泣かせるような返事はしないのに。

泣きながら横を走り去っていった女の子を見てそう思った。


「はあ…ツナ、いるんだろ」


びくっと肩が震える。
まさか気づかれていたなんて!

思わず立ち上がってしまった俺にヨシは近づいてくる。


「ツナ、早く帰ろう?」


ヨシは自分の鞄を持ち、自然な動作で俺の鞄を同じ手で持つ。

そしてさらに自然な動作で俺の右手を掴み、絡ませる。


「ちょ、ヨシ! さすがに…恥ずかしいって!」

「ん、何が」

「え、だからその…手、」


そこまで言ったらヨシは繋いだ手を持ち上げる。


「手がどうした?」


ニヤリ、と。
まさに効果音をつけるとそんな感じ。

そのヨシの顔を見て、コイツは確信犯だと思った。

いっつも俺が困ったり恥ずかしがったりするのを楽しそうに見てるんだからタチ
が悪いよな。


「だから! なんでいちいち家に帰るのに、兄弟で恋人繋ぎして帰るんだよ!」


いまだって、俺が必死に手を外そうとしてるのを見てケラケラ笑ってる。

しかも最後には…


「…いいじゃん、俺たち愛しあってるんだし?」


女の子が見たら気絶しそうなほど素敵な笑みを浮かべてこんな台詞を言うんだ。

男の、しかも弟の俺でも見惚れるほどの笑顔なんて、俺にはできない!


「……やっぱこの世は不平等だ」

「ん?」


完璧な兄にダメダメな俺。
双子なのにおかしいよ!

お願いだから神様、

この世のものを平等につくりたまえ。




……ていうか


「別に愛し合ってないから!!」


ぎゅっ、と手が強く握られた。




(冗談だってといいながら)(なぜ悲しそうな顔をするの)

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