Let's party!!
□†第五章†ある日の啓輔†
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†第五章†ある日の啓輔†
Side 啓輔
啓輔の朝は団子がなければ始まらない。
ようするに朝ご飯が団子なのだ。
「団子♪団子♪っ!!!なぁにぃ〜団子がない…昨日、買っておいたのに…」
啓輔は仕方なく又、団子を買いに行く。
しかし、片手には身長ほどの斧が…
すると家を出た啓輔に恐る恐る村人が遠くを指差して話し掛けてきた。
《あのぉ…、月光乃様…》
「ん」
《ひぃっ》
「あっ!ごめんごめん。」
《あの、先程‘団子’を持った…》
啓輔は話の途中で村人が指差している方に走り去っていった。
(団子を盗んだ奴…必ず殺す!!)
啓輔からは、ものすごい殺気が感じられる。
おまけに斧を持っているにもかかわらず、ものすごい速さで道を駆けてゆく。
ダダダダダダ!!!!!!!!
かなり先に団子を盗んだ犯人が走っている。
《へへ、何が武将だよ。ただのチビじゃねぇかw》
この後、悲劇に会うとも知らずに…
団子泥棒は、へらへら笑いながら走っている。
命が縮まることも知らずに…
そんなことはさて置き、啓輔は戦に行かんとばかりに、すごい殺気と速さで団子の匂いだけを頼りに走る。
その姿はまるで一匹のネズ…いや…虎のようにもみえる。
狙いを定められた犯人は、もう少しで死を見ることになることなど予想していなかっただろう。
団子が関わった時とチビと言われた時の啓輔は猛獣なのだ。
正直、戦で戦うより強くて、なおかつ怖い。
(もう少しで追い付く。)
ダダダダダダ!!!!!!!!
泥棒は歩きながら緩い事を言っていた。
《まっ、あの武将も、しょせんは、ただの“チビ”だったなっ。》
プツンッ!
何かが切れた音が泥棒の後ろからした。
泥棒の表情が凍る。
泥棒の目の前には斧の先が太陽に反射してギラギラ光っている。
共に啓輔の蒼き瞳も光っている。
「おい…こら誰がチビだって?」
啓輔は、すごい剣幕で泥棒を睨み付けた。
しかし、その姿は怖いのだが状況を知らない村人からすると斧を持った月光乃様が179cmの男の人を下から見上げていて怖いというよりも、その身長差が可愛いという方が妥当だと思う。
だが、啓輔の怒りは、もう誰にも止めることは出来ないのだ。
何故なら、“チビ”と言われたあげく取り返しに来たはずの団子は跡形も無く消えていたからである。
「てっめぇ!!オレの…オレの…団子をっ!!」
片手に持っていた斧を両手ではなく片手で振り上げた。
その瞬間、泥棒は腰を抜かした。
小柄な体格には、まったく合わない大きな斧が太陽と重なって泥棒の顔のところには陰が出来ている。
泥棒の顔が恐怖に歪んでいる。
今なら鮮明に見える啓輔の瞳が、とても恐ろしい。
啓輔は斧を振り落とした。
≪死ぬっ!!≫
次の瞬間、泥棒の顔の寸前で斧が止まった。
啓輔は、はぁ…とため息をつくと、両手を腰に当てて泥棒の方を、いつもの啓輔の顔で…はない顔で言った。
「おい…お前…殺されたくなけりゃ団子代だけ置いていけ。」
完全に脅迫している啓輔は、黒き笑みを浮かべている。
泥棒は恐る恐る袴のポケットに手を突っ込み銭を出して逃げていった。
やっと啓輔の顔が、いつもの顔に戻った。
「今度、来たら殺す…。」
鼻歌を歌いながら啓輔は、いつもの団子屋に着いた。
啓輔は、ご機嫌が宜しいようで子供のように笑いながら団子屋に言った。
「おばちゃん♪いつもの♪」
《あいよっ。》
そう言うと店のおばちゃんが団子を包み始めた。
このときの啓輔は完全に子供にしか見えない。
数分待つと、おばちゃんが笑顔で団子を啓輔に手渡した。
《いつも、ありがとうね。啓輔ちゃん。》
「いえいえ♪おばちゃんの所の団子が一番おいしいんだよ♪」
まるで、その会話は孫とお婆ちゃんの会話にしか聞こえない。
《じゃあ、また来てね。》
そう言われて、啓輔は団子屋を後にした。
団子を食べ歩きながら考える。
(これから面白くなりそうだな。伊達軍と♪ただ、片倉さんと霧ちゃんには警戒しとかないと…)
今の啓輔の姿は、なんとも奇妙なものだ。
何故なら、片手には身長ほどの斧…片手には団子…なんとも釣り合わない。
また、斧を持っている本人が小さいから本当に違和感があるが本人が気にしていないなら………、これ以上は触れないでおこう。
よく考えれば、もう夕方。
夕日を見て団子を頬張りながら啓輔は、もう一つ考えていた。
(後、一つ嫌なことが…。)
はぁ…、重い吐息をついて、また思考回路を戻す。
(だいたい…伊達軍の霧ちゃんに籐ちゃん、それに幸村にお館様に伊達さんに片倉さんに猿飛さん…みんな嫌なんだよね…。)
先ほどまで夕日を見ていた啓輔の顔が俯いた。
そして顔が、かなり暗い。
(だって…だって…みんな身長が高いし…みんなオレの事をチビだってバカにするし…。)
そう、啓輔には啓輔なりの悩み事があった。
その悩み事が解消されることは、まず無いだろう。
こうして、啓輔のある一日が終わったのである。
→後書き