忍たま

□眠れねぇ!
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(……眠れねぇ)


仰向けに寝た体勢で、掛け布団の端をギュッと握り締め、眉を寄せる。
今日はいつもと同じく、ハードな演習を何度もこなし、その度に行方不明になる二人――現在、作兵衛の両隣に同じく寝ている、左に神崎左門、右に次屋三之助を捜索して連れ戻し、肉体的にも精神的にも疲れきっているというのに、どういう事か眠れない。
ごろりと何度か寝返りをうつ。


(…やっぱり眠れねぇ)


作兵衛は眉間の皺を一層深くした。


「眠れないのか?」


何度目かの寝返りを打った所へ声を掛けられ、きつくつむっていた瞼をゆっくりと開けば、視界いっぱいに見慣れた顔が。


「ぅあっ!ちょ、び、びっくりするだろうが!!そんなに近付くなっ!!」

「眠れないのか?作兵衛」


作兵衛の言葉には返事をしないで先程言った言葉を再び口にする、左門。


「……あぁ」


寝てぇんだけどな…。と付け足して応えれば、左門は大きく瞬きをして、それは困ったなぁーと、唸る。


「…何?作兵衛、眠れないの?」


今度は背後から声がした。振り向けば、上半身を起き上がらせ、自分を見詰める三之助の姿が。


「…あぁ」


三之助投げ掛けに、先程応えた返事をもう一度すると、三之助も左門同様、何か考え始めた。


「…ん゛ー。幼い子には子守唄とか、何かお話をしたりするよな」


相変わらず考え込む体勢のまま口にする左門に、「オレはそんな歳じゃねぇ」と、突っ込む作兵衛。


「赤ん坊にはよく頭を撫でてあげたり、優しく体をポンポンッてするよな…こんな風に」


すると作兵衛の近くまで寄ると、作兵衛の腰辺りを優しくポンッポンッと叩き始める三之助。


「オレは赤ん坊じゃねぇ!!」


恥ずかしいから止めろと言わんばかりに、即座に起き上がり、三之助の手を跳ね退ける作兵衛。すると、はぁぁと大きくため息をついた。


「…オレの事はいいから二人は寝てくれ」

「でも」

「明日も演習で遠出するだろ?だから早く寝ろ」


反論しようと起き上がる二人を無理矢理布団に押し付け掛け布団を掛ける。掛け布団からは二つ分の不満そうな瞳が覗いていた。


「いーや、作兵衛が寝るまで寝ないからな!」

「はぁ!?」

「左門に同じく」

「何言って…っておい!?」


突然起き上がったかと思うと、もそもそと布団を作兵衛がいる方へ寄せ始める二人。作兵衛は何だ何だと自分の両隣で起きている事態を交互に見回している。暫くして、寄せ終えたのか、自分達の布団にごろりと寝転ぶ左門と三之助。


「なぁ、で、どうするんだ?!」

「さぁ…雑談でもする?」

「勝手に話しを進めるなっ…あぶっ!」


途中、突然両側から同時に腕を引かれ、布団に顔から突っ込んだ。


「何すん…」

「「しーーっ」」


怒鳴る作兵衛の言葉を遮り、口の前で人差し指を立てる二人に、作兵衛はハッとして口を閉じる。


「さぁて、何するんだっけか」

「雑談じゃなかったのか?三之助」

「・・・・・」


再び話しを再開させる二人に、もう何を言っても駄目だと悟ったのか、作兵衛は枕の上で両腕を組み、そこに顔を埋めて、静かに二人の話し合いに耳を傾けている。暫くじっと聞いていれば、それは会話から段々と心地よい音色へと姿を変えていった。これを例えると、そう。授業中の先生の話し声が子守唄に聞こえくるのと同じだ。
暫くすると、話し合う二人の耳に微かに寝息が届く。見れば、そこには組んだ腕に顔を埋めて規則正しい寝息を立てて、夢の世界に旅立っている作兵衛の姿が。


「・・・寝てる?」

「うん。寝てるな」


左門は静かに、作兵衛の顔を覗き込む。本当に寝ているのか確認すると、三之助の問い掛けに応えた。


「寝れたみたいで良かったな、作兵衛!」

「そうだな・・オレたちも寝るか」

「ああ!」


おやすみ。良い夢を!



+++

初三のろ話。
大好きです。この三人!!

どなたか私に文才を下さい(涙。

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