忍たま

□夏空の下
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「楽しそうだな」

「そうだな」


目の前には方向音痴で知られる、神崎左門、次屋三之助、そして同じく、二人の保護者として知られる富松作兵衛の姿があった。
それを近くの木陰で眺めるのは、三人の同級生である、浦風藤内、三反田数馬である。
からりと晴れたどこまでも青々と広がる空の下、あちこち走り回る三人に、眺める二人は、暑さ故に小さく息を吐いた。


「やっぱりあっちかぁー!」

「いや、そっちでもねぇええ!!つか、どこでもねぇからじっとしてくれぇ!!」

「あー、ねぇ、昼食まであとどれくらいかなぁ、作兵衛」

「はぁ、はぁ、ンなこと知るかぁああッ!!」


悲鳴にも似た叫び声は、眩しく輝く太陽と、空に吸い込まれるように消える。

決して楽しそうには見えないやり取りに、文頭の言葉を呟く二人。今の会話を富松が聞いていたら、直ぐ様怒鳴り声を上げたことだろう。


「いつも嫌だ嫌だと言ってる作兵衛だけど、やっぱりどこか楽しそうに見える」


じっと、三人…というよりは、富松を目で追いながら呟く三反田に、浦風は、持参してきた忍たまの友に目を通しながら、そうだなと返事をした。


「左門や三之助も、迷子になって叱られる度、嬉しそうだし」


言い終わるに連れ、声のボリュームが小さくなる三反田に、浦風は忍たまの友から視線を上げ、三反田を見た。相変わらず視線は目の前で走り回る三人に向いていて、木陰のせいでもあると思うが、彼の二藍色の瞳はいつもよりも暗い色をしていた。


「少しは分かるよ、その気持ち」


でも僕の場合、数馬たちみたいに気持ちがハッキリしていないから、まだ、認めてないけれど。


三人組に視線を移すのと同時に、今度は三反田が浦風を見た。そして何か言いたげに小さく口を開いたかと思えば、止め、浦風が見る方へ視線を移す。
見れば丁度走り回り終え、地面にうつ伏せに横たわる方向音痴二人の上に、もう逃がすものかと、肩で息をしながらのしかかっている保護者の姿が。なんと、まぁ、仲の宜しい事でしょう。


「やっと終わったみたいだね」

「もぉ、下手したら日射病になるぞ!」


そう三人に投げ掛けるのと同時に木陰から、陽射しが燦々と降り注ぐグラウンドへと駆けて行く。
浦風は、その後ろ姿を眺めてから、手にしている忍たまの友を閉じる。暑さでだるく、重い体を持ち上げ立つと、汗だくで柏餅のように積まれた三人に、何やら声を上げる紫苑色のもとへと溜め息混じりに、一歩踏み出した。



end



+++

気持ちは富松総受けです
仲良し三人組に嫉妬する数馬氏が書きたかったの
私の中では藤内が微妙な位置にいて、参戦するのか否か自分でも分かんない(´`)

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