忍たま
□甘えたがり
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三年のとある一室にて。
パラパラ、と、本をめくる音が耳に届く。暫くすると、その音にうんざりしたような唸り声が聞こえてきた。
「なぁ〜」
「………」
「作兵衛〜」
「……………」
「さくぅ〜」
「……………何だ?」
机に向かい、机上には忍たまの友と数枚の問題用紙を広げ、視線はそれらに落としたまま、返事を質問で返す。
「つまらん」
きっぱりとそう応えた左門は、先ほどからずっと作兵衛の背後で、ごろごろと床を転がっていた。
そして質問に応えた今も、床を左右に行ったり来たりと、転がっている。
「オレにどうしろって言うンだよ」
「ボクと遊ぶ」
「無理!」
今度は作兵衛がきっぱり言い切る。手は相変わらず忙しく筆を走らせたまま。
「この宿題終わるまで待ってくれ」
ぺらりと忍たまの友をめくり、目を通しながら言えば、待てんと、即答されてしまった。そんな左門を少しめんどくさいなぁとか思いながら、目の前にある問題の答えを一生懸命に探す。作兵衛がうんうん、唸りながらやっているこの宿題は先程の授業で出されたものだ。やることやって、のんびりしたいと、直ぐ様宿題の片付けに入ったのは作兵衛だけではなく左門もで。その左門はと言えば、さっさと宿題を済ませてしまい、暇をもて余しているのだ。取り掛かりは同時だったのに、この差はなんだと、少し悔しさを感じながら目の前の問題に集中することに専念する作兵衛。そんな作兵衛を知ってか知らずか、作兵衛、作兵衛と連呼する左門。
「だぁーっ!もう!分からねぇええ!!」
耐えきれなくなったのか、突然叫んだかと思えば机の上に崩れ落ちた。机に突っ伏した作兵衛の背をのろのろと這い上がり、肩越しから問題を覗き混んでみれば、8割り方解き終わっている。
「なら、遊ぼう!」
「うるへー、重い、退いてくれ」
背中にのし掛かる左門に文句を言いながら、再び問題用紙を睨み付けた。
「ならボクが教えてやろう」
「いや、……」
自分の力で問題を解きたい。
そう思う作兵衛ではあるが、先程からどれだけ考えても解けずにいる問題。もう完全にお手上げなのだ。だとすれば今、自分の背中で他人の髪に頬擦りする同級生に頼るしかない。
諦めの溜め息をゆっくりとこぼすと、教えてくれ、と小さな声で助けを求めた。
「よし、じゃあ遊ぼう」
「は?」
直ぐに教えてくれるものとばかり思っていたが、彼の口から出たものはそうではなくて。
「いや、教えてくれるンじゃねぇのか?」
「ボクを満足させたら教えてやる」
そう言うと、すぐ目の前でニィーッと笑む左門。これは言っても聞いてくれそうにないな、と作兵衛は諦めの溜め息を再びこぼし、左門に向き直った。
「で、何するんだ?」
こてんと小首を傾げれば、次の瞬間、視界が大きく揺れ、あっという間に視界全てが天井で覆い尽くされていた。そこにひょっこり顔を覗かせるのは満面の笑顔。
「?」
倒れた体を起こそうと、試みるが、自分に覆い被さる体に阻止されてしまった。
「…左門?」
一体何なんだ、いきなり他人を押し倒してのし掛かってきて。
そう言いたそうな表情で目の前の笑顔を見れば、あははと笑われた。
「作兵衛ぇーっ」
ぎゅぅうううう…!!
「うぁ、な、何だ!?」
今度は突然の抱き付き。しかも痛いくらいぎゅうぎゅうと抱き締めてくるときた。
「作兵衛ぇー」
「……」
オレの胸に頬擦りしながらこれまた幸せそうに名を呼ぶ。完全に甘えるモードに入ってしまった。こうなると左門は、なかなか離してはくれない。以前、今と同じ事が起きた時、逃れようと試みたのだが、なかなかしぶとく、三之助の助けがあってやっとのこと引き剥がすことができた。
そんなことをぐるぐる頭の中で巡らせると、気が済むまでこうしてやるか、と、静かに息を零した。
その後、たまたま二人の部屋に遊びに来た数馬に、鬼のような顔で作兵衛から引き剥がされた左門でありました。
end
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ただ甘える左門が書きたかっただけの相変わらずの駄文(^-^;
ぅあ、書き直したい(直してもあんま変わらんぞ。