忍たま
□お願い事
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「何か願い事が一つだけ叶うなら、何を願う?」
縁側で二人、特に何をするでもなく、ただ、青々と澄んだ空を眺めていた。仰向けに寝転ぶオレの隣で、乱太郎は筆と紙を持って、座っている。手にしている筆は動かない。瞳は先程からずっと空を映している。
時々春のあたたかな風が吹いて、庭に咲く、桜の花びらと共に乱太郎の髪を撫でていく。ふわふわと空気に踊る色素の薄い茶色は日の光を浴びてキラキラしていて綺麗だ。
そんな事を心の中で呟きながら、しばらく乱太郎を眺めていたオレなのだが、乱太郎と話がしたいと思い、文頭の言葉を投げかけた。特に深い意味はない。乱太郎と話が出来るであれば、話題など何でもいいんだ。
「願い事?」
空を映していた瞳が、次は俺を映した。
うん。願い事。そう返せば、そうだなぁと手にしていただけで何も描かれていない紙に視線を落とす。オレは相変わらず静かに乱太郎の横顔を見つめた。
少しの間を開け、こちらを見て、
「皆がずっと笑顔でいられますように」
かな、とふわりと笑む。
ああ、やっぱり。
「そう言うと思った」
のそりと起き上がり、乱太郎と肩を並べれば、予想できてたの?と声を掛けられた。
「じゃぁ、団蔵は?」
「オレ?オレは…」
乱太郎の願いが叶いますように、かな
「…やっぱり、秘密」
「えーっ!ズルイ!」
オレは一人の幸せを願うのに、お前はいつだって、皆の幸せを願うンだな
そう、いつだって
「乱太郎の願い事が叶ったら教えるよ」
心地よく吹く風と共に笑えば、目の前の顔は、納得いかないなぁと、口を尖らせながら、空を舞う桜の花びらを目で追った。
end
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ただ、乱ちゃんはいつだって皆の事を想っているよって事が書きたかっただけ。
で、団蔵はいつだって乱ちゃんの事しか想ってないよって書きたかっただけ。